第4話 一緒に下校する
場面は冒頭に戻り俺は荷物持ち要員として、スーパーから自宅への道を葉月と歩いていた。
「……」
「……」
「あー……」
「……」
スーパーで買い物を終えて数分。
しばらく無言が続いていたが、葉月が声を出した。
しかし特に何も続ける様子がなかったので俺は構うことなく歩き続ける。
「えーっと……お米重くない? 大丈夫?」
「……大丈夫」
「ならいいんだけど」
「……」
普通に重たいし、どうにかしたいが何を言うにしても面倒だったので俺は口を閉じる。
たかがあと5分だ。
それぐらい運動を全くしない俺でも耐えられる。
先ほどから話題を探すように、口を開けたり閉じたりしていた葉月が言う。
「趣味とかってあるの?」
「……まあ、マンガ、とか」
俺がぼそりと答えるとけだるげな葉月の目がいつもより少しだけ開いた。
「へー、マンガ。何読むの? 私もマンガ少し読むからさ。おんなじマンガ好きかも」
有名どころだけを挙げるのはオタクとしてのプライドが許さなかったし、マイナーどころだけ挙げるのもキモい気がしたのでそこそこ有名だけどマイナーな作品を俺は10個ほど挙げた。(早口)
「へ、へー……」
「……」
葉月の顔が引きつっていた。
一つも知らなかったらしい。
俺は押し黙る。
まあ別に期待していない。
というか仮に同じマンガが好きでも、意外とマンガの話題で盛り上がるの難しかったりするしな。
会話が一瞬途切れるが、すぐに葉月が接ぎ穂を見つけてくる。
「ほかの趣味は?」
「ない」
「ないってことはなくない?」
「いや、ないし」
「……まあいいけど。じゃあ、料理とかは? 確か、お母さんたちが再婚する前はたまに料理してたんだよね?」
「仕方なくしてただけで好きじゃない」
「……なんか、好きな料理とかある? お母さん料理好きだから言ったら喜んで作ってくれるよ、たぶん」
「食事にこだわりがない」
「ああ、そう……」
「……」
「……」
俺の返答に小さく葉月が息をつく。
再度沈黙が訪れる。
それからも何度か会話は起こりかけたがすぐに立ち消えた。
おそらく葉月は会話が得意なタイプではない。
教室での友人との会話を見ていても相づちがメインだったし、今の十数分でも無理に話題をひねり出している印象を受けた。
俺は正直喋るのが好きじゃないし、それどころか会話をしすぎると不快感を感じ始める人間なので、できることなら止めてほしい。
そんな態度に気づいていないはずがなかろうに、どうして葉月は無理にでも俺と会話をするのだろうか。
単純に沈黙が耐えられないのか、実は会話が得意ではないが好きなのか、あるいは――
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