第13話

「音羽!!…」


僕が勢いよく起き上がってその拍子で頭がくらんでまた倒れ込むと、慌てて音羽が駆け寄ってきた。


「馬鹿じゃないの?!寝てなって!」

「でも、お前!音羽!」

「あたしがなに。」

「……クソが。」


僕が目を隠してそう呟くと、


彼女は僕の頭を撫でながら、


「早く抱いてよ」と耳元で囁いた。



何が起きていたかはわからない。

でも、確かにあの時僕は音羽を抱き締めていた。

そして彼女に確かに『戻ってこい』と言われていた。



「上乗れ。お前がいいならやってやる。お前の体は俺だけの物だから。好きに使わせろ。」


音羽はその言葉を聞いて僕にキスした。


「ところ構わず?」

「…お前の犬なんで。どこでも盛れる。」

「あんたは賢いね」

「なにが。」

「ん?」


音羽は笑ってまた僕の頬にキスした。

言わずともお互い通じていた。

どれだけ僕がキャンキャンわめこうとも、結局飼い主に頭撫でられて自ら腹出して喜んでる犬でしかない。



「音羽。」

「なに?」

「早く抱きたい」

「乗られるだけじゃ嫌でしょ?」

「うん。首絞めて鳴かせたい。頭おかしくしてやりたい」

「…じゃあ早く帰ろ。私も奏じゃないとダメなんだから。」


「……」

「言いたくないなら言わなくていいよ。」


僕が音羽の目をじっと見つめると彼女はそう答えた。


「俺どんくさいから。やっぱ見たんだ。」

「鞄から出てた。」

「でも音羽に戻された」


「あたしの望みは死んでも叶えるでしょ?」

「『仰せのままに』」

「あたしの『犬』だからね」

愚犬ばかいぬだけどね。」

「そんな事ない。あたしのハチ公。」



僕はもう一度体を起こして音羽にキスした。



「ダメだ…脱がせたい」

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