第11話

「美味しい?」

「美味しい。」

「よかった。」

「音羽は本当に飯が美味いな。」

「よくわかってるでしょ?」

「本当に……。」


音羽が僕の横に来て、口移しし始めた。


「手のかかる子。」

「どっからそう読みとった?」

「教えてあげない。」

「音羽は天才だな。」

「そう?わかりやすい。」

「音羽…」

「ご飯食べてからね。」


手の上で音羽を転がしてると思っているが、本当は音羽に転がされてる。


こういう関係が一番…楽。


下からいつも僕を見てくる。

でも実質は…上から見られてる。



「音羽…」

「音羽。」

「音羽!」


僕はことある事に彼女を呼ぶ。

必ず彼女は視界に僕を置く。


そして…微笑みをくれる。



「うるさいな。なに。」

「…一緒にテレビ見よ。」


また僕を見て微笑む。


「普通に言え。」

「……。」


後ろから彼女を包み込むと、

「めんどくさいな。」と言われる。

でも不思議と腹は立たない。


「音羽。」

「なに?」

「ずっと俺見てた?」

「見てたよ。」

「そうだよな。」

「そうだよ。」

「ごめん手止めて。俺も手伝う。」

「ありがとう。じゃあこれ、片付けてきて?」

「はい。」


居心地がいい。

安心する…。



「音羽…ずっと見てて。」

僕がふとそう言うと、

「あたしを誰だと思ってんの?望遠鏡使ってでも見るから大丈夫。」


狂ってる。でもこの狂いが好き。


僕も本当は双眼鏡なんかより望遠鏡でみたい。凄い性能のいいやつで。

…本当にはたから見たらただの変態同士。


でもね、これが幸せ。

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