光を求めて

第10話

ある日の仕事終わり、アプリで待ち合わせをした。写真を見たわけじゃない。誰が来るかも分からない。

ただたまらなく、『会いたい』と思った。

『何かしたい』わけじゃなく、『吸い寄せ』られていた。



―――――――――「久しぶり」


相手から僕に話しかけてきた。


「まだ生きてたんだ。」

「ごあいさつね。」

「…時間の無駄だ。」


そんな言葉の表側をちゃんと理解して

僕の肩に腕を回して目を見てきた。


「…やめろ。消えろ。邪魔。」

「許してくれない?」

「死ねばいい。」

「……わかった。」


恨み辛みを吐き付けると一瞬その人が暗い顔をした。その瞬間にその人に強引にキスした。


「…相変わらず性格悪い。」

「好きなくせして」


飛鳥は少しだけ僕の目を見てやり返しとばかりに人目もはばからず深いキスをしてきた。


「……今は?そら1人?」

「お前も鼻がいいもんな。」

「それは奏もでしょ?」

「殺してやろうと思った。お前諸共もろとも。」

「へぇー…あの小さな檻に入ってたやつがそんなデカいこと考えてたんだ?」


僕は瞬時にみぞおちに来ると判断して彼女の手を止めた。


「お見通し?」

「お前は俺の言葉の裏をちゃんと見れる。」

「あたし、信頼されてる。」


「お前の犬だから」

「あんたの飼い主だから。」


導かれるように言葉が重なった。


「でも、『人間他人の犬になる』を作るお前は気に入らない。この場で息の根止めてもいい。」

「…いつからそんな偉くなったの?」

「さぁ?でも俺、勘違いしてたかも。」

「あたしの事?奏自身の事?」

「お前の事。」

「どんな風に?」


「お前は何度でも俺を裏切る。言葉の裏も見えてない。」

「なぜそう思う?」

「お前の目、俺を見下してる。所詮、『犬は犬』か?ずっと檻に詰めとくか?」

「あんたがそれ望んでんじゃなて?」

「変わったかも、俺。本当はお前の側かも。」

「…あんたは犬以下。だからあそこに入れてた。ただの『モノ』。いい気してどっからモノ言ってんの?」


その場にさっきとは違う異様な空気が流れていた。


僕は、冷静にスマホを手に取ってあるヒトに電話をかけた。


―――――――――『あのさ。元に戻ろう。ずっとお前に飲ませてたい。』


『それは消費期限?賞味期限?』

『そんなくだらないものない。永久的にお前に飲ませ続けてやる。出なくなったらとりあえずなんか出るもの飲ませてやる。だからしっかり飲み続けろ。出来るか?』


『…むしろこちらからお願いしたいくらい。』


『じゃあ、固く契約を交わそう。これから役場に行く。一緒に書いて誓約書にしよう。いいな?』

『飲ませてくれたら書いてあげてもいい。』

『口開けて待っとけ。』

『少なかったら吐き出してやるから。』



――――――――『婚約成立。じゃあな。』

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