第3話

あの日から主は僕から目を離さなくなった。


「お腹減ってない?」

「なんか飲む?」

「…こっちおいで。」


以前にも増して僕に話しかけてくれて、

手を差し伸べて、ケージから出して…

僕をソファに座らせてその前に彼女が座ることが増えた。

出かける時はいつも一緒。


2人ともあまり話さない。

けど、そんなある日…主を見ていると胸が切なくなってたまらなくなった。

多分…そう…感情が溢れてしまった。


「ねぇ。」

「ん?…」


僕は主の目を見たあと、

唇を重ねた…。


主は驚くことも無く受け入れた。



「飛鳥。もういい?俺同じ目線でいい?」

「だからここに置いてる。」

「…でも首輪これこれは付けてて。」

「安心すんでしょ?わかってる。」


僕は、失礼にも主を強く強く抱き締めた…。


「飛鳥、小さいな」

「好きでしょ?」

「うん。」


「…する?」

「いい。」

「こういう事は好きだけど、いざとなるとあんまり好きじゃないんだ。だから奏多をあの中に入れてた。」

「そうだったの?」

「うん。。…でも奏多は?その、溜まったりしないの?」

「溜まるよ」

「…出したい?」

「こっそり出してるから」

「…違う。私に出したい?」

「飛鳥の手ではしてみたい。」


「…頭の中は私でいっぱい?」

「いっぱい。飛鳥の手に収まらないくらいいっぱい。」

「嬉しい…」


主も少しどこか病んでいる。

だから僕との歯車が噛み合う。


「飛鳥、おいで。」


主を膝の上に乗せた。

主は肩まで伸びた黒い髪を耳にかけた。


ピアスだらけの耳がたまらない。


「飛鳥。」

「なに?」

「出ちゃいそう」


そう言うと彼女は意地悪に僕の手を彼女の耳に触れさせた。


「…出して」

「…っ…」


彼女の手が触れるとそのまま従った。


「そんなに私が好き?」

「うん。大好きです。」

「…ならやっぱりあそこに入ってて欲しい。」

「…承知しました。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る