第3話

 おれ浜辺はまべにあぐらをかいてすわった。ここはどこなのか、さっきのこえはこれがこころなかだとっていた。こええた。周囲しゅういにはだれもいなかった。

 うみおだやかになみっていた。

 こころなかだとわれてもよくわからない。こえは、自分じぶんだれかといういに「ぼくきみだよ」とっていた。これがおれこころなかだとしてなんなんだ? 事務所じむしょはなしていたなぞ人物じんぶつも、ここの空間くうかんおれこころなかだという趣旨しゅしのことをっていた。ついさっきのやりとりの記憶きおくがもうおぼろげになりつつあるが、かぎめろとかなんとかともっていた。もしやかぎっていたりしないかとになってズボンのポケットをさぐるがなにはいっていなかった。こころなか整合性せいごうせいもなにもない。

 すなうえよこになってみた。すなうえおもっていたよりかたかった。

 じる。まったねむくなかった。なんだかいままでかんじたことのないくらいえわたっている気分きぶんだ。仕事しごとちゅうなんていっつもねむいのにな。いつもこれであってくれよ。

 わかっているのは、ここはおれこころなからしいってことだが、こころなかというのはふわっとした表現ひょうげんだ。手足てあしおもうようにうごかせる。皮膚ひふをつねるといたい。

 こころなかというのはじつうそ現実げんじつということはあるか。いや、おれたしかに事務所じむしょた。そして、事務所じむしょえ、砂浜すなはまうみあらわれた。現実げんじつではなさそう。こころなかっぽいといえば、なぞこえ現実げんじつではありえない。どこにもかくれる場所ばしょはない。まったくもってなぞだ。

 れたワイシャツとスラックスは着心地きごこちわるいが、さむくはない。もういいや、ひとまずこのままよう。見上みあげるとつきまぶしい。最近さいきんよるはよくねむれていなかった。じ、さざなみのおとみみませた。

ないほうがいいよ」なぞこえった。


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