第2話

 ここはどこだ。

 あるはずの駐輪場ちゅうりんじょうはどこにもなかった。通勤用つうきんよう電動でんどう自転車じてんしゃもなかった。

 わりに砂浜すなはまひろがっていた。真上まうえには満月まんげつがあり、ゆらめく水面すいめん銀色ぎんいろらしている。

 潮風しおかぜいてかみがなびいた。かぜおどろいてかえると、今度こんど裏口うらぐちがなかった。建物たてもの自体じたいがなかった。

 さっきからなにかがおかしかった。おれだれはなしていたのか。もうかおおもせない。

 なにきたんだ? て、て、て。これはおれこころなかだと、さっきだれかがっていなかったか。だとしたら、なに? こころなか、だとしたら、なんだ? こころなかってなんだ?

「ヒントをあげようか?」耳元みみもとうしろのほうこえこえた。

 おどろいて、こえのほうをく。

 めた。

 おれ砂浜すなはまに倒れていた。スーツがぐっしょりと海水かいすいれておもたくなっていた。ほほすながついている。

 くちなかすなとツバをく。

 つきかがやいている。灰色はいいろ砂浜すなはまに、灰色はいいろなみせてはいていった。

 さっきとおな場所ばしょ

「おはよう」背後はいごでまたこえこえた。

「あなたはだれですか?」おれった。今度こんどうしろをかなかった。

ぼくきみだよ」こえった。

「ここはどこなんですか?」

きみいま自分じぶん自身じしんこころなかにいるんだよ」

こころなか?」おれった。

「そう」こえった。

こころなかというのは?」

こころなかこころなかだよ」

「もうすこしヒントをもらえませんか?」おれいた。

あたまなかおおきな衝撃しょうげきはじけた。

おれ砂浜すなはまたおれた。視界しかいしろなにえなかった。

かんがえなさい。かんがえなさい。かんがえなさい」

こえった。

おれはもうなにいていなかった。

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