1日目 新しい転校生

「おはよー!」


僕は教室に入り、先に来ていた葉月(はづき)にそう言った。


「あぁ……おはよう」


と、葉月は元気なく返事をした。


「今日転校生が来るんだって。それよりさー、聞いてよ〜。推しアイドルの萌子(もえこ)ちゃんが〜アイドル辞めちゃってぇ……。」


葉月は悲しそうにしている。


「アイドル辞めるのはお祝いしないといけないかもしれないけどぉ……。」


葉月はうぅぅ……と言っている。

萌子ちゃんとは多分地下アイドルの事だろう。

少し前に葉月が地下アイドルにハマっていると言っていた。


「葉月、アイドルの事は悲しいかもしれないけど、僕は転校生のことの方が気になるな。」


僕は、葉月の好きな(元)アイドルの話を遮ってそう言った。


「うぅぅぅ……。涙のないヤツめ!転校生の情報は今、文作(あやさ)と心(こころ)ちゃんが調べてるよ。」


「血も涙もあるよ。」


文作とは心は、探偵ごっこが大好きな2人組だ。

尤も心は、文作と一緒にいるのが好きなんだろうけど…。

文作と心は、いつも一緒にいる。

出身中が同じだかららしい。


「ネタが上がるのも時間の問題だ……。」


葉月は、そう言って刑事の顔をした。


「葉月達〜!おはよぉ〜。」


「2人とも、おはよう!」


「おはよう。瑠琉(るる)、月(るな)。」


「おはよう。月ちゃん。」


「なぜ俺には挨拶しないんだ、葉月!!!」


瑠琉が葉月に近づいてそう言った。


「あぁ、ニセシストの瑠琉か、気づかなかったよ。影薄いから。」


葉月は笑いながらそう言った。


「はぁ!?お前の目が悪いだけだろ?眼鏡買ったら?」


「視力AAですー。メガネ買う必要ありませーん!」


葉月と瑠流は、犬猿の仲だ。

でも、1番の仲良しだ。


「2人とも仲良いなぁ。」


その声は……!


「文作達!!!おはよう!」


「おはよう!朝から元気だな、お前ら。」


「おはよー。皆様。」


文作と心が教室に入ってきた。


「文作、せっかくだけど、転校生の話聞かせて。」


「おう!いいぜ。」


そう言って文作は転校生のことを話し始めた。


「……。成程、つまり転校生は、可愛いんだな?」


「ああ、男だがな。」


葉月は、男ということを悲しんでいる。


「うぅぅぅ………。。かわいい彼女欲しぃよぉ……。」


葉月は嘆いている。


「ほら、このイケメンの瑠琉様が恋愛シュミレーションゲーム貸してやるから泣くなよ。」


そう言って葉月に渡されたのは、[ドキドキ♡アニマル学園 ~10人の王子様と私~]と書いてあるソフトだった。


「乙女ゲームじゃねーかっ!……、俺は王子の心を射止めたいわけじゃねーよっ!うぅぅぅ……。」


「せっかく葉月のために買ってあげたのにぃ。」


瑠流は、笑っている。


「ちなみに、全部のキャラを攻略出来たら隠しルートの悪役令嬢攻略ができるよ!まぁ、ハーレムエンドは無いけど……。」


「ふぅ………。…すぅ………まあ、一応貰っておこう。」


葉月は、ソフトをカバンの中に入れた。


「皆様〜。もうすぐホームルーム始まるよ〜。」


「あっ、ほんとだ。やっべー。ありがとう。」


僕らはチャイムが鳴る前に席に着いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る