第12話 取引

机を挟んで陰陽師の二人と見つめあう。何を話したらいいのかわからないので相手が喋るのを待つ。


「長谷川さんそちらに見える羽張様からお話を聞きましたが、ここら一帯を浄化していただいたそうでありがとうございます。その際に使用した井戸の水をいただきたいという相談で上がらせてもらいました。」


「俺としては自由に使っていただいて構わないですよ。水道代もかかってないですし水神様がいいなら好きにしてください。」


「僕たちは~君が良いなら大丈夫だよ。」


「それなら、家の総意でOKですね。」


「いえ、ただでもらうなんてできませんしっかりと使用料は払わせてもらいます。1Lでこのくらいお支払いしようと思います。」


手渡された紙にはびっくりするぐらいの金額が書かれていた。水でこの値段なんて聞いたことないぞ、これが札束で殴られるという感覚なのか。


「ほんとにこの金額でいいんですか?」


「足りないですか・・・・。」


「いやいや、そんなことないです。高すぎて驚いただけです。もっと安くてもいいんですよ。」


「それはいけません、神の加護が含まれている水なんですから相応の金額をお支払いします。うちとしてはもう少し余裕がありますのでいかほどで。」


「それならこのままで大丈夫です。むしろこれでお願いします。」


「話はまとまったようじゃな、昼にするのじゃ。」


「あ、あぁすぐ準備するよ。」


不労所得手に入れちゃったな。数年は大丈夫だけどそのうち働かないとって思ってたけど働かなくていいなこれ。井戸水と野菜を売っていれば生活していけるし貯金もできる。なんて幸せな生活だろうか。


お昼の時間はとっくに過ぎているので市販の冷凍ピザに朝とれた野菜の切ったものを追加でトッピングしチーズも追加して焼き上げたら大皿にとり切り分ける。それだけでは少ないのでトマトと卵の入ったコンソメスープをつけ昼食とすることにした。畑中君にはさいの目に切った野菜の盛り合わせだ。


「どうぞ、家で採れた野菜ですけどおいしいとは思うんで食べてってください。」


「この野菜も売っていただけたりとかって・・・。」


「あっはい。」


やっぱりそうですよね、神様の力はいってるもんな~。もう何でもいいや。好きにしてくれ、俺はもう何でも受け入れてやる。


これまた驚くような金額だったのだが、もう何も言わない。二人もホクホク顔なのできっといい条件なんだろう。


昼食を食べ終わると二人は野菜の入った袋と井戸水の入ったペットボトルを両手いっぱいにもって帰って行った。


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「先輩、驚きの連続でしたね。最後にお土産が持って帰れるとは思わなかったっす。」


「そうだなー、個々の取引でだれか常駐したほうがいいだろうな。」


「まさか先輩!」


「そのまさかだ、俺はここに住むぞ!!この思いはだれにも止められん。帰ったらすぐに上へ報告だ。」


「いや、俺もここに住みたいんすけど!」


「先輩はちょっと早めの勇退なんだよ邪魔すんな!」


「ずるいっすよ~~~~~。」

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