第10話 野菜の行方
それにしても年がら年中収穫できるということは収穫した野菜の消費方法を考えなければいけないな。
一番最初に思いつくのは自家消費なのだがこの家には4人しかいないのでとても消費のスピードが間に合わないし、近所の人たちも自分の畑があるからいらないだろう。となると麓の直売所で売ってもらうか?農家ってわけでもないのに毎日同じ野菜を納品し続けたら不審に思われるかな・・・・まあ神様の力でどうにかなるか。
畑中くんの収穫してくれた野菜を冷蔵庫の中へ入るだけ入れたら車に積み込む。
「神様方~ちょっと出かけてきます。」
「はいよ~。」
「わかったのじゃ。」
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麓の直売所に着き店の中にいた男性店員に声をかける。
「すみません、うちで採れた野菜を売りたいんですけどどうすればいいですか?」
「初めての人かい、売りたい野菜をそこに並べてくれればいいよ。値段は自分で考えな。あっちに紙とペンがあるからそれで書いてくれればいいから。」
「買うときにほかの人のやつと区別がつかなくなっちゃうと思うんですけど置くだけでいいですか?」
「大丈夫だよ、レジにもっていくんじゃなくてその場で購入・受け渡しだからね。」
昔ながらの八百屋スタイルなのか。それなら安心だ。さっそく持ってきた野菜を並べさせてもらおう。
「おっ!夏野菜か、まだ時期には早いけどいいものができてるね。ハウス栽培かい?」
神様のおかげでいつでも取り放題なんてとても言えないよな~なんて言おうか。
「そんなもんです、ははは。」
「そうかい!時季外れの物が並ぶのはありがたい。うちの分も買わせてもらうよ。」
「ありがとうございます、これって売り上げは明日とりにくるかんじですか?」
「そうだよ、売り上げの2割はここの使用料としてこっちで引かせてもらうから残りが君の取り分になる。ちゃんと何が何個売れたかは紙に書いて渡すから安心してくれ。もし売れ残ったものがあればその時に渡すから安く売るか家に持って帰るかは任せるよ。」
「わかりました、それじゃあまた明日来ますね。」
「あっ!ちょっと待ってくれ。もしクズ野菜なんかが余ってるようだったらこの近くに牛舎があるんだがそこが欲しがってるから持っていってほしい。少しでもエサ台を抑える工夫てやつだね。その代わり持って行ってくれた人にはつぶした家畜の肉を少し分けてもらえるみたいからぜひ行ってみてくれ。」
「そんなこともやってるんですね、ならここに卸す予定だったやつを少しそっちにもっていってみます。」
「よろしくな!」
店員さんに別れを告げ牛舎のある場所へと移動する。直売所から丁寧に看板が立っていたのでそれに沿って車を進める。
だいぶ山道を上がったころようやく牛舎が見えてきた。駐車場の案内に従い車を止め牛舎の中に顔を出す。
「モー。」
牛舎一杯に牛が広がっており尻尾を振って水を飲んでいたり餌を食べていた。人生初めての光景に驚きつつどこかに人がいないかあたりを見渡す。
「誰もいないな・・・。どこに行けば人がいるんだろう?」
「何をやっとる!!」
中をキョロキョロと見ていた俺に誰かが声をかけた。
「見ない顔だ、ここで何をやっていた。」
「えっ・・・・と。」
こえー、顔厳ついしめっちゃガタイ良くてヘビー級のプロレスラーみたいな見た目なんですが。それに右手に持ったフォークが相まって完全にアー●デーモンじゃないか。
「だから何をやっていたんだ!!!」
「や、野菜を持ってきました!」
「なんだ野菜を持ってきてくれたのか。早く言ってくれよ、大事な牛にいたずらしに来た奴かと思ったじゃないか。最近越してきたのか?」
「はい。ついこの間越してきたばかりなんですけど、さっき直売所で余ってる野菜を持っていってほしいて言われたんで少しですけど持ってきました。」
「そうか、そうか。気を遣わせちまったな。ほんとに余ってるときだけでいいんだぞ、普段は直売所に卸して自分のたくわえに回してくれ。」
「これがその野菜になります。どうぞ。」
「おおありがとよ。クズ野菜じゃなくてこんなにいい野菜を持ってくるとはほんとすまねえ。お礼はちゃんとするからよ電話番号教えてもらっていいか?肉分けるときに連絡するからよ。」
「待ってくださいね・・・0※※-8※89-2※※※になります。それと自己紹介がまだでしたが長谷川と言います、これからよろしくお願いします。」
「わかったぜ長谷川、俺は
弐久地さんは野菜の入った袋をもってどこかへ行ってしまったので自由に回らせてもらおうと思う。
牛舎横に倉庫があったので覗いてみると、牛の餌が入っているようで乾燥した牧草やトウモロコシ・大豆・麦なんかがたくさん積んであった。
これ全部牛の餌か、これだけかかるなら少しでも食費を浮かせよう思う気持ちは確かにわかるな。一頭が肉になるまでにいくらかかるんだろうか想像がつかない。高級な肉が高いのも納得の理由だ。
倉庫を出てさらに歩くと白い俵がたくさん積み上げられていた。あれがサイレージという奴だろうか?発酵した牧草をビニールで巻いたものなんだが牛にとっては栄養たっぷりの餌らしい。匂いは甘酸っぱく臭くはないらしい。
その後は敷地から出て開けた場所に出た。おそらく放牧するための場所だと思うのだが今は何もいないので山の上から見下ろす景色を独り占めだ。
自宅から見える自然の景色もいいがここの景色は段違いに良い。ここで昼寝でもしたら最高だろうな。もし許可がもらえるなら一人キャンプをするのもいいかもしれない。
ぼーっと景色を見ていたのだがもうすぐお昼なのに気づき慌てて家に帰ることにした。神様たちがご飯ご飯とうるさいからしょうがないね。それに畑中くんにとっては初めての食事なんだから忘れるのはかわいそうだ。
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