第9話 畑の妖精?
畑に種を植えた日の夜、長谷川がぐっすりと寝ている横で月明かりに照らされる畑では異変が起こっていた。
月明かりを反射するように種を植えた場所が淡く光っており次第に地面から小さな芽が出てどんどんと大きくなっていくではないか。
それに伴って光も強く大きくなっていき畑は光に包まれていた。しばらくすると光は落ち着き始め、土しか見えなかった畑には立派な実をつけた野菜が元気よく茂っていた。
何も知らない長谷川をよそに更に変化が起きていく。
月が暮れて太陽が出始めたころ畑の土の一部が盛り上がり中から小さな小人が一人生まれた。その小人は生まれてすぐに動き始め畑に生っている野菜をどんどん収穫していき土で作ったカゴの中にしまっていく。
完全に日が昇るころにはすべて収穫出来ており、疲れてしまったのかそのままカゴにもたれるようにして眠ってしまった。
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「ふぁ~あ、よく寝た。今日は何をしようかな~って何だこりゃ!」
長谷川の目に映るのは昨日まで茶色だった畑だが今では真っ青になっていた。
「寝ている間に何が起こったんだ。とりあえず二人に聞いてみないと。」
急いで部屋を出て一階に降りリビングで寝ている水神様の元へ行く。
「水神様、畑が大変なことに!」
「ん~?あぁ~!驚いた?神様印の畑すごいでしょ~。」
「すごいでしょ~って神様たちの仕業ですか。そりゃあ驚きますよ、一晩でこんなにも大きく成長してるんですから。」
「成長しただけじゃ~ないんだけどね~。続きは羽張が来てからにしようか~それまでは~秘密だよ。」
話はそこまでで止められてしまったので朝ごはんの準備をすることにする。
ご飯ができたころに羽張様が起きてきたのでご飯を食べながら畑のことを切り出す。
「羽張様、水神様には聞きましたが畑の異変について何か知ってますか?」
「もちろん知っておるのじゃ。もう収穫できるようになっとるんじゃろ?感謝するんじゃぞ、これでいつでも野菜が食べ放題じゃ。土の栄養は気にする出ないぞ水さえやっておけば万事OKじゃ。もちろん病気や虫食いも発生することはない。」
「何もOKじゃないです。聞いてないです。年がら年中夏野菜が収穫出来たらそれはもう事件ですよ。ご近所さんになんていえばいいんですか!」
「大丈夫じゃ、その辺の者にはこれが普通の景色として映るから気にすることはない。笑って無視しておけばいいのじゃ。朝食を食べたらさっそく収穫に行くのじゃ。」
「いや収穫って、まだ実は生ってなかったですよ。」
「う~ん、収穫できないのは僕も予想外だったな~。」
「そんなはずはないのじゃ!ちょっと見てくるのじゃ。」
そう言って羽張様は箸をおき畑へとかけていき、すぐにバタバタと足音を鳴らし慌てて羽張様は帰ってきた。
「予想外なのじゃ!もう妖精が生まれておった。こやつのせいで収穫物がなかったのじゃ。」
「すやすやと眠る小人をむんずりと握りこちらに見えるように前に出す。よく見ると男の子で年齢は若く人間でいうところの小学生ぐらいの顔つきだ。
「妖精?小人?なんなんですか?」
「おぬしこんな話は聞いたことはないか?寝ていて目を覚ますと小さなおじさんが家の中を走り回っていたという話を。」
「なんか聞いたことありますね。でもあんなの夢かなんかじゃないんですか?」
「あれは実在するのじゃ。家に出る小人にも色々おってな家の中で掃除や家事をするのは女の姿で、害虫や害獣を追い出すのはおじさんの姿で、家庭菜園や動物の世話をするのは若い男の姿で生まれるのじゃ。つまりこやつはこの畑を管理するために生まれた小人妖精なのじゃ。もう少し時間がかかると思っておったがまさか一日で生まれてくるとは思わんかったのじゃ。」
「つまりこの子が収穫から水やりまですべてやってくれると、そういうことですね。」
「うむ、食事はしなくてもよいのじゃがわしらが食べていると自分も欲しいと言ってくるじゃろうからその時は出してやってくれ。人の味はこやつらにとってはおいしいモノではないから料理したものではなく生野菜を小さく切り井戸水と一緒に出してやればよいぞ。っと話しているうちに起きたみたいじゃな。」
ハッと目を覚まし自分が握られていることに気づきそこから逃れようと体をじたばたと動かし始めたので羽張様そっと地面に近づけ手を離した。
「プンヾ(`・3・´)ノプン」
「おぉ、すまんな。持ちやすいからつい握ってしもうた。」
「えーとなんて呼べばいいんだ?妖精さん?」
「そうじゃな畑中くんと命名しよう!」
「ヾ( ゚∀゚)ノ゙」
「本人がいいならいいか。一応そこにいる羽張様からいろいろ聞いたから、畑のことは任せるよ。欲しいものがあったらすぐに教えてくれよ。ちなみに夜はどこで寝るつもり?」
「もちろんわしの部屋じゃ。おぬしたちに踏まれでもしたら大変じゃからな!」
あんたが一番踏みそうだろ、偉そうに言うな。それにしてもつかめるし踏めるってことは妖精なのに実体があるのか。なんとなくこういうのは透けたりしてつかめない幽霊のようなものって感じがあるけどそんなことはないんだな。
「それじゃあよろしくな畑中くん。」
握手をしやすいようにしゃがんで人差し指を突き出すとそれをしっかりと握って揺らしてくれた。
「(●´Д`)⊃ 」
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