第8話 清々しい一日
目が覚めて布団を出ると大きなあくびをしながら体を伸ばして一階へと降りる。
一階に降りるとすでに水神様は起きておりテレビを見ていた。
「おはようございます。相変わらず早いですね。」
「おはよ~。神に人間のような時間の感覚はないからね~。」
「羽張様は別みたいですけどね。」
「そーいう子もいるさ~。」
水神様と話をしながら閉まっているカーテンを開けると青い空、緑が映える森林、そして黒い影のない家の塀、なんて清々しい朝なのだろうか。ここ最近で一番いい気持ちかもしれない。
直毘神にもらった布本当に効果があったんだな。朝起きたら夢でしたなんてオチじゃなくて本当に良かった。
フライパンを取り出し油を少したらしたらウインナーと目玉焼きを焼いていく。卵の焼き方は人によってこだわりがあり黄身が半熟だったり固焼きだったり、割ってしまう人だっている。
この家では料理を作れる人が俺だけなのですべて俺に一任されているから喧嘩の種が出なくてよかった。ちなみにかける調味料はいろいろあるから個人の自由にしているよ。
焼けたもの皿に移しご飯をついでいると羽張様が起きてきた。
「おはようなのじゃ~。」
「おはようございます。まだ眠そうですね、もうご飯にしますけど食べれますか?」
「食べるのじゃ。」
目をこすりながらふらふらと揺れる体で椅子に座り牛乳をグビっと飲む。
「ぷはー、おかわりなのじゃ。」
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朝ごはんも食べ終わり仕事もないのでダラっとソファーに座りテレビを見つめる。平日ということもあり特に面白い番組がやっていないためどんどん眠気が起きてくる。
「のう長谷川、おぬし畑はいつから手を出すのじゃ?」
「んへ?畑?あーそういえばここに来た時に畑と米を作れって言ってましたね。すっかり忘れてました。」
「なんじゃと!こっちはすでに準備しておったのにおぬしという奴は。」
羽張様は怒ってしまったようでポカポカと俺の体を叩いた。
「すみませんって、何が必要ですか?すぐに用意しますよ。」
「種さえあれば他は何もいらんのじゃ。」
なら適当に買ってくるか。もうすぐ春が終わり夏がやってくるから夏野菜の種を中心に買ってこよう。すぐに家を出ると車に乗って麓のスーパーに直行する。
何の種にしようか。茄子・オクラ・キュウリ・トマト、あとは薬味用に小葱と青じそを買って行こう。
降りてきたついでにいろいろ買い物を済ませ家へと戻る。
「ただいま~。羽張様~種買ってきましたよ。」
「待っておったのじゃ。荷物を置いたら畑まで来るのじゃ。わしは先に行っておるからな。」
買ってきたものをしまい終え種をもって畑へ移動する。
「遅いのじゃ!種は持っておるな。なら自分の好きなように蒔くがよい。なるべく一列に間隔をあけて蒔いていくのじゃ。」
自分の見ていない間に畑の準備をしていてくれたようで立派な畑ができている。土はふかふかで雑草もない。
しゃがみ込んで袋から種を取り出し一列ごとに種を変え丁寧に蒔いて行った。小葱と青じそはプランターで小さく栽培するようなのでそちらに蒔いておく。
「蒔き終わったな。そうしたら井戸の水を汲んでしっかりと撒くのじゃ。多すぎるくらいで良いぞ。」
井戸水を何度もくむのは大変なのだが現状蛇口を通していないので手作業でやるしかない。1時間半ほどかけて畑にまんべんなく水がいきわたった。
「これくらいであればよいじゃろう。後は待つだけじゃ。稲はまた今度説明するから今日のところはこれでお終いじゃ。」
そう言うと羽張様は上機嫌に家へ帰って行った。
「それにしても畑かなりビシャビシャだけどほんとによかったのかな?」
「井戸水は僕の加護がかかってるからね~植物にとってはいくらでも欲しいものなのさ。」
「でも水ってやりすぎると種が腐るって聞いた気がするんですけど。」
「そこは神の力と思ってくれれば~いいさ。都合のいい言葉だけど~これが真理だから。加護を与えるものが神聖であれば何事もよい方向へ行き、悪性であれば悪いほうへ行くそんなもんだと考えて欲しい~な。」
やっぱ神様って偉大だわ。そんなことを思う平和な日の始まりであった。
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