第6話 恐怖の帰り道
宮司と別れ神社の階段を下り始める。先ほどの会話が脳内で何度も繰り返し流れる。
気持ちのせいか階段を降りるにつれて空気が重く悪くなっていっている気がする。焦っているのか上りの半分ほどの時間で一番下までついてしまった。そして家への帰り道を見て恐怖に声が漏れそうになる。
道のわきに小さな黒い影がいくつも見えるのだ。その影をよく見ると人の形をかろうじてしており、顔の大きさに合わない目と口がった。瞼はなく丸い眼球がこちらを見つめており口元は喜びのためかひどくゆがんでいた。
立ち止まってはいけない、その言葉を思い出し何事もなかったように無視して歩みを進める。
歩く俺の木を引こうとしているのか触れることはないが近寄り顔を覗き込んでくるので目を合わせないように視線を動かし更に歩みを早める。
「忘れ物だよ!」
後から先ほどの宮司の声が聞こえた。思わず振り返りそうになるがあの宮司は神社を出たら助けられないと言っていた。ここに居るはずがないのだ。振り返りそうになる首を無理やり前に戻し何度も聞こえてくる声を無視する。
家まで中ほど来た頃あろうか優しそうなおじいさんが立っていた。
「今年はいい野菜が取れた少し分けてあげるからうちに来なさい。」
こんなおじいさんは見たことがない。ここは空き家だったはずだ。無視して進もうとすると。
「家へよっていけ~~~!!!!」
大声を出しこちらを呼び止めようとする。
「早くこっちへ来い~~~!!!!逃げるな~~~!!!!」
俺の背中に向かって大声をかけるおじいさんの言葉は次第に悪くなっていき最後は馬頭を浴びせられた。
「このクソガキ~~●んじまえ~~~!!!」
それを最後にピタリと声がやんだ。ホッとした瞬間にすさまじい鳥肌が立った。
いつの間にか俺に寄り添うように誰かが立っていたのだ。少し後ろにいるためか姿かたちはわからないがずっとクチャクチャと言っている。
よく耳を澄ませると。●ね●ねと何度も繰り返しており次第に声が大きくなっていってる。
恐怖で足が震えるが耳をふさぎ歩みを進める。
しばらくすると横で聞こえる声は耳をふさぐ程度では全く意味がないほどの大声になっていた。そしていつの間にか人数が増え何人もの声が聞こえるのだ。
それでも無視し続け歩いていると前方に見知った顔のおばあさんが倒れており腰を抑えていた。
知った顔ということもあり慌てて歩みよりどうしたのか尋ねると。
「腰を痛めてしまって歩けないのよ。申し訳ないけど家まで送ってくれないかい。」
知り合いをこんな道端にほかって無視するなんてできない。宮司との約束もあるためおばあさんの家ではなく自分の家に向かうと告げおんぶしようとすると。
「お家までよろしくね。」
先ほどのおばあさんの声ではなく低く暗い声で声をかけられた。しまった!と思ったが遅く背に乗せたものはどんどんと重くなっていき俺を押しつぶし始めた。思わずポケットに入っていたお守りをぶつけてやるとギャっという声とともに背中から重みが消えたのでその場から走り去る。
手にあるお守りを確認すると新品であったはずの姿が何年も使ったように黒ずんでいて所々傷ができていた。
中から見えるお札はビリビリに破れていてお守りが命を救ってくれたのがよくわかる。
さっきのが宮司が言っていた助けを求められてもって奴なんだろう。まさか知った顔になれるとは思わなかった。これで自分を守ってくれるものは無くなってしまった。家まで残り4分の1ほどすべてを無視して歩かねばと心を強くして歩く。
どんなに声をかけれようと近寄られようとすべてを無視して家まで歩く。自分が歩いてきた道はどうなっているのだろうか、どんな光景になっているのだろうかこんな状況が現実に起こっているなんて当事者でなければとてもじゃないが信じられない。
ようやく家までついた。家の敷地内には入ってこれないのか中へ入ったとたん声や気配が自分のそばから離れた。
玄関をくぐり真っ直ぐ神棚の元へと向かいすぐにお札をお供えしほっと息をつく。
リビングに行くと二人の神が外を見て睨んでいた。
「よく無事に帰ってきたのじゃ!あれを見よ。」
指の刺す先を見ると、塀の向こうからこちらを見つめるたくさんの人影。
「いや~僕たちも~うかつだったよ。君には悪いことをした。」
「まああ奴らはここまでは入ってこれん、家の中にいれば安全なのじゃ。」
いやでもあんだけ人影があると過ごしにくいんですけど。
「なんじゃ、心配しておるのか?それなら玄関の水瓶をもって水をかけてくるのじゃ。それで消えると思うのじゃ。」
ほんとかな~と思いながらも水瓶をもって塀のそばへと寄り中の水をかける。
ギャ~~~という叫び声をあげながらのたうち回り煙となって人影は消えてしまった。それを見ていた周りの影は少しずつだがこちらとの距離を開け森の中へと下がっていった。
「あれは何なんだ?」
「穢れじゃ。山には穢れがたまりやすい。その溜まった穢れが山の中で自殺したものの体を得てこの用に悪さをするのじゃ。つかまれば死が待っている。そしてあ奴らのように体を取られて森をさまようのじゃ。」
「ほんとはこの土地の~神様が浄化するのが正しいんだけど肝心の土地神がこれじゃ~ね。」
「わしが悪いのか!忘れてしまった村人たちが悪いのじゃ!そのせいで力は少なくこの家を守るのが精いっぱいなのじゃ。」
「それも完璧じゃないから~直毘神のお札が欲しかったんだけどね。」
「とりあえず神社の若い宮司さんが今度家に来てくれるらしいからその時にいろいろ相談しようと思っているから一緒にいてくれると話が早いかな。」
「ん~?あそこに若い宮司などおったかの?」
「僕も知らないな~。」
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