第4話 同居開始
「まずここが玄関になります。今のところは何もないけど靴箱の上に思い出の物を置いていこうと思ってるんだ。」
「それではわしからこれをやるのじゃ。」
羽張様は懐から木の生えた苔球を取り出した。
どっからそんなもん出てきたんだ、神様の懐はい次元空間かよ。
「それじゃあ~僕からはこれをあげる。」
水神様の頭の上にいつの間にか透明な水瓶がのっかっておりそれを靴箱の上に置いた。
「それは~勝手に水が湧いて汚れることもないから~その苔球にあげる水として使えばいいよ。」
「わしの苔球は空気をきれいにする効果があるのじゃ。そしてこの小さな木には悪いものを寄せ付けない効果があるから人間にはぴったりなのじゃ。」
「大切にさせてもらうよ。」
直ぐに小さなお皿とお玉を持ってきて苔球を置いた後水をかけておく。
「うんうん、この二つがあれば~この家は神聖とはいかないけど少しはいい環境になったと思うよ。」
「次に行くのじゃ!」
そう言われるので次はリビングへ。
「ここがリビングでご飯を作って食べたりみんなで集まるための場所です。」
「ふむふむ、この大きな黒い板はなんじゃ?」
「それはテレビっていって動く絵が映るんだよ。」
「テレビは知っておるぞ、もっと小さくて分厚かった気がするんじゃが?」
「あー昔はそうだったらしいけど今はこれが普通なんだ。高いものだともっと薄いのがあったりするよ。」
「技術の進化とはすごいもんじゃの。」
「僕はいろんな場所に行けるから~知ってるけどね。」
ほかにもこれはなんだと聞かれるので一つずつ説明していきすべての部屋を案内し終わりリビングに戻ってきた。
「してわしの部屋話どこじゃ?」
何を言ってるんだこいつは。
「羽張様の部屋なんてないですよ?」
「なぜじゃ!!」
「羽張様にあったのは今日が初めてですし神様のお家はあの社ですよね。」
「いやじゃ、いやじゃ。わしもここに部屋が欲しいのじゃ。」
部屋は余ってるから別にいいんだけど今すぐに用意するのは無理だよ。
それに神様の部屋ってなんだ!
「そんな~わがままを言っちゃあ~いけないよ。僕はこのソファーでいいからね。こんど柔らかいクッションを買っておいてくれればなお欲しいよ。」
お前も住むんかい!
「それでどうなのじゃ、わしに部屋をくれるのか。」
「わかりましたよ、一つ部屋をあげます。でも欲しいものはすぐに用意できないのでその間は我慢してください。いいですね。」
「わかったのじゃ!それまではこのソファーとやらで寝るのじゃ。」
社に帰るんじゃないのかよ。
はー、これから毎日疲れそうだな。でもこんな騒がしい時間に幸せを感じている自分がいる。
少し前まで死にそうになっていたのが嘘のようだ。ほんと羽張様には感謝しないとな。
「外も暗くなってきましたしご飯を作ろうかと思うんですけどお二人も食べます?」
「「食べる(のじゃ)。」」
「それじゃあテレビでも見て待ってってください。」
二人を置いてご飯の準備をするために台所へと移動する。引っ越し当日で凝ったものは作りたくないので簡単なものにしよう。
まずは玉ねぎを細く切ってしんなりするまで炒めたら一口大に切った鶏肉を入れてさらに炒める。
水、醤油、酒、みりん、だしを入れて一煮立ちさせる。我が家では砂糖をあまり使わずみりんで甘みを出すようにしている。
火を消して溶き卵を流し込んだらふたを閉めて固まるまでほかっておく。
ご飯が炊けたらもう一度温め直しテーブルにフライパンごと置き自分で好きなだけかけられるようにする。
「ご飯できたよー。」
「待ってたのじゃ。」
「待ってたよ~。」
「羽張様はスプーンを用意したけど、水神様はどうやって食べます?」
「それなら皿においてくれればそのまま食べるから良いよ。」
「それでは適当にのせますね。羽張様はそのどんぶりに食べられる分だけのせてください。ご飯はそこにありますから。」
「わかったのじゃ!」
みんなにご飯がいきわたったので手を合わせる。
「それではいただきます。」
「のじゃ!」
親子丼って簡単だしうまいよな~。使うだしによって味が変わってくるから家によって作り方が変わるんだよな。
俺の作り方と母親の作り方は違ったしもちろん友達の家の味も違った。
「うまいの~久々の料理なのじゃ。沁みるのじゃ~。」
「僕も人の料理は~久々に食べたな。昔みたいに大きな祭事も少ないから食べる機会がめっきり減っちゃった。」
「おぬしに言っておかんことがあった。神棚と仏壇はどうしたのじゃ?」
「仏壇は上の兄さんが管理してくれてるよ。神棚はいるの?」
「神棚は家の守りみたいなもんじゃからなあったほうが良いぞ。最近は置かない家が増えてきておると聞いたからなおぬしはどうかと思って気になったのじゃ。」
「教えたのは~僕だけどね。」
神棚ってあったほうがいいのか。ほかでもない神様が言うんだから本当のことなんだろうな。
神棚の中に入れるお札って大きい神社のところがいいんだろうけどこの辺に有名な神社というか神様っていたっけ?
「お札はどこで買ったほうがいいとかあります?」
「この辺なら~
「おお!あやつか。穢れ払いの力があるから家の守りには持ってこいじゃぞ。」
「僕たちより~上位の神様なんだからそんな友人みたいな扱いは~ダメだと思うよ。」
「そ、そうじゃな。とにかくその神様で良いと思うのじゃ。」
「直毘神ですね、今度買ってきます。」
ご飯も食べ終わったことだしお風呂にでも入るか。神様も入るのか?
「神様方はお風呂に入ります?」
「わしらは大丈夫じゃ。ここでテレビを見ておる。」
なんやかんやで神様との同居生活が始まってしまった俺の未来はどうなっていくのだろうか。
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