第2話 はじめまして

「こちらで紹介できる物件は以上となります。気に入った物件がありましたら後ほどご連絡いただければすぐに契約書のほうをご用意いたします。役所のほうに戻ったら解散としましょう。」


家のポストでチラシを見た後に俺はすぐに行動を起こした。家中の物を整理しいつでも引っ越せる状態にしておき今日この場に来ている。


今日一日で何件か見たがチラシで見た通り住宅はきれいにリフォームしてあり大きな雑草もなく荷物さえ持ってこれば今すぐにでも住むことができそうだ。


一応3件よさそうなものがあって決めかねている。


一つ目は、大きな家に小さな庭の付いている物件。最もスタンダードで持ち家としては理想のタイプだろう。今後家族が増える可能性を考えるとこの家が一番いい気がする。


二つ目は、平屋と家庭菜園ができるぐらい大きな庭がついている物件。老後のことを考えると階段のない平屋建てが過ごしやすいかもしれないし、野菜は買うと高いので自分の家で消費するぐらいの野菜が作れると家計的にもいいのかもしれない。


三つ目は、小さな家のみの物件。大きくても現状一人なのだから持て余してしまう分これくらいの小さな家のほうがいいのかもしれない。今後家族ができてーとか将来のことを真剣に考えるようになってから改めて引っ越しなりどこかに家を建てるなりすればいいかも。


どうしようか?一人で考えるしかないとわかっているのだが誰かの意見が欲しい。自分の考えに自信が持てないし選択を間違えてしまえばこの先何年かはその家で過ごすこととなる。


家に帰ってからもどうしようか迷っている。じっくりと考えているとなんだか眠くなってきたので目を閉じて少し横になることにする。


(庭付きの平屋にするのじゃ・・・・)


はっ!!


「今声が聞こえた気が・・・気のせいか。一人で何を言ってるんだろうか。それにしても庭付きの平屋か。枕元に死んだ両親でも立ったのかもしれないな。これも何かの縁だ平屋にしよう。」


直ぐに担当の人へ電話をかけて書類を用意してもらった。次の日に契約を交わし引っ越しの作業を行うこととなった。


そして引っ越し当日


「お預かりした荷物はすべて指示通りに運んでありますので後はよろしくお願いします。荷物で何かありましたらすぐにご連絡ください。それではご利用ありがとうございました。」


「はい、ありがとうございます!」


部屋の中でも動くのがつらく無気力でひどく落ち込んでいたのが嘘のように今では元気はつらつとしている。自分でもなぜこんなに元気になったのかよくわからないが嫌な過去のことを考えても仕方がないので前に進もうと思う。


荷物整理は一人分の荷物しかないのですぐに終わったので家の探検に出ようと思う。


事前の内見では時間があまりなかったのでパッと見るぐらいだったがよく確認してみると庭に生えていた木の枝の中に埋もれるようにひっそりと小さなお社が立っていた。


近くによって確認してみると葉の茂った枝のせいで風通りが悪く木材が一部カビが生えていたり腐っていった。虫に削られた後もあるのでとてもじゃないがいい状態とは言えないだろう。塗装ももともとあったのか所々赤や白など名残が残っている。


ひとまずお社がこんな状態なのはよくないと枝を切り社に日光が当たるようにする。現状それ以上のことはできないのでパックご飯と野菜をお供えして目をつぶり手を合わせておく。


「久々の供え物じゃ!!」


「は?」


突然の声に驚き目の前を見ると供え物にかぶりつく少女の姿がそこには合った。


「おう!ご苦労じゃ。」


「あの・・・誰?」


「神じゃ。」


「神様ですか・・・・人間の長谷川です。初めまして。」


「土地神の羽張はばりなのじゃ、こちらこそ初めましてなのじゃ。」

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