雨を待つ人々

 僕とフィロンが草原に降り立つと、そこにはたくさんの人がいて、空を見上げているんだ。


 口をあんぐりと開けたまま、じっと動かない。


「あの人たちは、いったい何をしているんだい?」


 僕がフィロンにそう聞いてみると、


「雨を待っているんだよ」


彼はそう答えた。


「ねえ、ハルくん。あの人たちはね、ああやってずっと、口の中へ水が入ってくるのを待っているんだ」


 フィロンはにこにことしながら言った。


「どうして水をくみに行かないの?」


 僕は彼に聞いた。


「さあ、めんどうなんじゃない? 自分が動くよりも、周りが動いてくれほうが楽でしょ?」


「う~ん、それはそうだけど……」


「あの人たちはね、自分からは絶対に動こうとしないんだ。誰かが動いてくれるのをずっと待っているんだ。だから、見てごらん。あの人たちのあごはすっかり固くなって、ほとんど動かなくなってしまっているんだよ」


「それって、なんだか……」


「誰かが助けてくれると思い込んでいるんだ。自分で自分を助けるんじゃなくてね。そういうものなのさ、あの人たちは」


「あの人たちっていうか、それってまるで、人間そのものというか――」


 僕がそう言いかけたとき、フィロンのまなざしが泥のように濁った。


 でもすぐもとのフィロンに戻ると、にこっと僕に笑いかけた。


「ハルくん、次、行こうか?」


「う、うん……」


 なんだか僕の頭の中は、だんだんとぼやけてきている感じがしたんだ。

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