第40話

「その場しのぎで声が出なくなったフリをしてしまったらしい。礼王レオを巻き込んでしまったって、那愛魔ナアマは後悔してた」とチャドは言った。


「関係ないよ。いずれはソォーンに目をつけられたと思う…」

そう言った直後に礼王が怒り出した。


「ちょっと、チャド!ドサクサに紛れてアタシのこと呼び捨てしてる!アンタは呼び捨て禁止!」

「なんで、一平 にいはいいのにオレはダメなの?」


「…」礼王はちょっと困ったような顔をして

「チャドのクセに、アタシを呼び捨てなんて100年早いからよ!」

とめちゃくちゃなことを言った。


チャドは「ふ~ん」と言って、俺たちを交互に見てニヤニヤしている。


「勘違いするなよ!俺はただの下僕だから…」

「そうだよ、ただの下僕!」

「下僕かぁ〜、オレも下僕になりたいな〜」


礼王はますます怒り出して、

「もうそんな話はいいから!肝心な話をしよう!チャドはいったい何をしたくて、アタシたちをこんな目にあわせたの!?」


俺もそこが聞きたかったので

「そうだよ、何故騙すみたいなことしたんだよ?」

と聞いた。


「騙すっていうか…。一平兄と礼王ちゃんには感謝してほしいくらいだよ」

「どういうこと?」

「オレが早い段階で気づいて止めたから、まだソォーンにはバレてないと思うけど、あんなのバレバレだよ?」


まぁ確かに…。


「車は?あれもお前が盗んだのか?」

「抜かりはないよ。ちゃんと那愛魔の家に戻しておいたから。半日なかったくらいでは疑われないだろう」


「そっか…。まぁ、ありがとう…」

「ちょっと一平、あまーい!私たちを縛ったことは?これはやり過ぎでしょ?」


「だって、説得したって聞かないでしょ?オレの立場を説明したり、ややこしいし、時間なかったから手っ取り早く…」

「ん〜〜っっ!腹立つ!けど…っ!」

「まぁまぁ、チャドは助けてくれたんだから、もう良しとしよう。なんか、遊んでた気もするけど…」

「ま、まぁ、それは許して…。ぶっ…ふっ…だって…あ、あんな状況、なかなか無いから、ちょっとああいうの、やってみたくなるでしょ?…うっ…くくっ…ぷっ…ふっ…」


なんか、また腹立ってきた…。

俺と礼王の顔を見て、チャドは慌てて

「そんなことより、ソォーンをぶっ潰すの、手伝ってよ」

と話を変えた。

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