第38話

頬に柔らかいものが触れている。えっと…、あぁ、あのピンクのフェイクファーの敷物か…。

ということは、俺は座席シートに寝ている…のか…。


あのクマはどうしたかな…?

ちょっと待てよ、運転手の女性はどこに行ったんだ?

いや、そんなことより礼王レオは…?


ハッと目を開けると、なぜか車の中ではなく、部屋の中にいるようだ。床にはラグが敷かれていて、俺はその上に横になっている。


俺は寝てしまってたんだろうか…?


身体中が痛く、手足が動かない。なんとかもがいて、寝返りを打つと、隣に横たわっている少女が目に入った。


礼王だ。どうして礼王が床に…?よく見ると礼王は手足を縛られている。俺は腕と脚に力を入れてみた。やはり、俺も縛られている。だから動けなかったのか。


そこへガチャっとドアが開く音がした。

なんとかそちらを見ようとするが上手くいかない…。

足音が近づいて来て目の前に尖った靴先が見えた。スーツパンツの裾も…。紫がかったグレー?


「一平 にい、どうしたんだよ。こんなところに寝ちゃって…」

笑いを含んだ声が聞こえてきた。


「チャド…!?」


顔を確かめたいが、頭が持ち上がらない。


「チャド?なんでお前がここにいるんだよ?」

「さあね〜、なんででしょう?」

ふざけた口調だ。


「一平兄、あれで逃げてるつもりだったの?バカだなぁ〜。なんかバカ過ぎて愛おしくなっちゃうよ」


「ふざけるなよ!ここはどこなんだ?なぜ俺たちをここに連れてきた?なんで縛るんだよ?」

「まぁまぁ、落ち着いて。ここはオレの部屋。と言ってもここは仕事に使ってるだけだから、住んでるわけじゃないけど」

「俺たちをどうする気なんだ?なぜ礼王まで巻き込むんだよ?ソォーンの命令か?俺たちをソォーンに引き渡すように命令されてるのか?こんなことして、罪の意識はないのか?」


「ちょっと黙ってくれる!?質問多すぎ!答える暇が無い!」


俺が黙ると、「改めて!」と言って、チャドはコホンと咳払いをした。


「まず、ソォーンは関係ない。オレが自分の意思でやってることだ」

「なんでお前がこんなこと…?ん…?もしかしてお前、テロリストか?どこかを爆破するつもりか?どこを爆破するつもりなんだ?」


「もぉ〜、一平兄、ちょっと黙っててって!」

「一平、黙っててよ。チャドの話が聞けないじゃない!」同時に礼王の声が聞こえた。どうやら目が覚めていたようだ。


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