第34話

「でも、逃げるって言っても無理だろ?どうやって逃げるんだよ?」

「アタシね、運転上手いんだよ」礼王レオは得意げに言った。


那愛魔ナアマの車取ってこよう」

「いやいや、バレるだろう?絶対止められるよ」

「何日かはバレないでいけると思う。今までも時々車使ってるし…」

「ん?無免許…?」

「はいはい、そこはいいの!お説教はききません!」


車を用意できたとしても、本当に逃げることなんてできるのか?一体どこまで逃げればいいのか…?

なんだか雑すぎる計画だ。


「じゃあ、一平は何かいいアイディアがあるの?あるんなら教えてよ」

こう問いつめられると、黙って首を振るしかない…。


「何もないんなら、アタシの計画に協力してもらうよ」

「う~む。まずは、もう少し細かく計画を練ろう。資金のこととか、見つからない方法とか…」



どうやら礼王はだいぶ前から、逃亡することを考えていたらしい。運転にしても、逃亡のために練習していたようだし。資金のことは、カードや電子マネーを使うと足がつくので、少しずつ現金を下ろして手元に保管していたり。ナンバープレートから追跡されるかもしれないので、カバーを用意したり。ちなみにこちらの世界でもカバーを付けて走るのは違法なので、これはどちらのリスクを取るか考えどころだ。だが、そもそも無免許の礼王が運転すること自体がリスクだ。


「やっぱり運転は俺がするわ。ちょっとでもリスクは避けよう」

「つまんないの!運転好きなのに〜。今まで捕まったことなんてないよ」


礼王の過去の綱渡りを想像すると、背筋が寒くなった。



1ヶ月かけて準備して、いよいよ逃避行を決行することになった。Chat Noirは、俺だけが長期休暇をとって、礼王は無断欠勤。2人で行動してることは少しでも長く隠しておきたい。




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