第32話
ソォーンはこちらを見下すいやらしい笑顔を浮かべて言った。
「君みたいな男のことをなんて言うか、わかるかい?」
「俺のことなんて、どうでもいいですよ。すぐ熱くなるバカ男とでも呼んだらいい。
俺が頭を下げると、もっといろんな悪口を言いたかったのに当てが外れたのか、ソォーンは残念そうに
「君ごときが頭を下げたって何の役にも立たないよ」と言った。
「すみません。役に立たないのはわかっているけど、俺にはこれしかできることがないんです」
カッコ悪いが本当に何も思いつかない…。ソォーンの言うとおり、頭の中は空っぽなんだ。
「本当につまらない男だなぁ。私の下で飼ってやろうと思ったが、こんな面白みも可愛げもないものは、飼う気にもならん」
ソォーンは俺に背を向けて、ドアに向かいながら
「とりあえず帰りたまえ。おかしな動きがあれば、また来てもらうことになるかもな。ただし、次回はこの部屋には呼ばれないものと思ってくれ」と言った。
ソォーンが出て行くと部下達も続いたが、チャドだけは俺のそばに来た。
「一平
「俺、ああいうやつが一番苦手なんだよ」
「なんかわかるけど…」とチャドはニヤッと笑った。
「なぁ、帰りはまたリムジンだよな?」
「いや、多分勝手に帰れってことじゃない?」
「え?帰り方もわからんし、金も無いよ」
「しょうがないな〜。金は貸してあげる。ちゃんと返してね」
チャドに帰り方を教えてもらって、なんとかマンションにたどり着くと、リビングでソファに座っていた礼王が俺の顔を見るなり立ち上がった。
「また
「いや、ソォーンのところ」
「えっ?」
礼王は、駆け寄ってきて、俺が何か暴行を受けてないか調べるみたいに上から下まで見た。
「なんであんなヘビみたいなやつのところに行くのよ?帰してもらえたなんて奇跡だよ」
「チャドが来いって…。あいつ、ソォーンの部下だぞ」
「知ってるよ」
えっ?知ってるの?
「チャドのことは怪しいと思って調べてた。ま、隠す気もなかったみたいだけど」
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