第30話
今回は
革張りの立派なソファから一人の男が立ち上がって、近づいてきた。
「ソォーンです。あなたが山田一平?」と右手を差し出してきた。
人の良さそうな満面の笑み。だが、噂を信じるなら逆に胡散臭い笑顔だ。さりげなく呼び捨てでマウントをとってくるあたり、やはりいやらしさが滲みでている。
「俺に何の用なんですか?」
とりあえず、差し出された右手は無視する。怪しい噂に一票だ。それに、手汗がバレるのも避けたいし…。
ソォーンの後ろに控える部下らしき男たちの中にチャドを見つけて、思わず睨みつけた。スーツ姿は珍しい。ビジネスマンというよりホストみたいだ。紫がかった派手な色味、細身のシルエットで、相変わらずピアスもジャラジャラついている。俺の視線に気づいてニヤニヤしているのにはカチンときた。
「君に会いたいと思ってたんだよ、一平」
ソォーンは無視された右手で俺の腕を馴れ馴れしくぽんぽんとたたいた。
「どうして俺なんかに会いたいんですか?ジャスティス。あ、呼び捨てでいいですよね?」軽くジャブを打ってみる。
ちょっとムッとしたようだ。
「申し訳ない、チャドがいつも君を一平
「いいですよ、ソォーンさん。こちらこそ失礼しました」
「まぁ、固い話は後にして、まずはソファに座って。何か飲みますか?」
「いや、喉渇いてないんで」
この状況で何か飲むなんて、俺もそこまで阿呆じゃない。毒入ってたら、どーすんだ!
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