第26話
「どどどどうしたんですか…?」
目の前に那愛魔の顔が迫ってくる。
ダメですっ!それはダメです!俺なんかに那愛魔が…恐れおおい…。
柔らかいものが唇に触れた瞬間、俺の脳みそは爆発した。
容量オーバーで機能停止だ。
目の前は霞がかかって真っ白。耳も聞こえていない…。
数秒間、怖いくらいの幸福感と罪悪感以外の感覚は無くなっていた。
耳元に「お願いね…」と言う那愛魔のささやきが聞こえた。
何をお願いされたのだろう?何か言っていたのだろうか…?
わからないままに、俺はがくがくとうなずいていた。
それからどうやってマンションに帰ったのか、全く記憶に残っていない。
自分の部屋に入ってベッドの上に廃人のように横たわった。
夕方になって
ご飯を食べるかどうか聞いていたような気がする。
礼王には絶対に何も言えない。きっと軽蔑されるだろう。
だが、あの瞬間はただただ幸福だった。感覚は何も覚えていないが、幸福感だけは繰り返し蘇ってきた。
「ね、もしかして那愛魔と会ったでしょう?」
何かを察したのか、礼王が聞いてきた。
「何を聞いたか知らないけど、あの人はウソつきだよ。言ったこと全部信じない方がいい」
俺は頭が混乱してきた。那愛魔の言ったことは、確かに信じ難い話だけど、礼王の様子がおかしかったことの説明になっているような気がする。礼王は何のことを言っているのか、聞きたいが、この話を始めるとあのことを悟られてしまいそうで怖かった。
ずるいようだが、礼王に軽蔑されるのも嫌だ。
この日から、俺はできるだけ人と喋ることを避けるようになった。
礼王も俺の様子がおかしいのに気づいていながら、触れないようにしていた。
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