第25話
”Chat Noir"での
「私の言ってることこそ、信じられないでしょうね…」
那愛魔は自嘲するように笑った。
「でも本当なんです。1年前から、私はあの子に私の仕事を押し付けていたんです。あの子は、この1年、高校だってちゃんと通えてないの」
俺は呆然として返事もできないでいたが、那愛魔は話し続けた。
「こういう状況になって、あの子とギクシャクし始めたの。私が礼王を娘じゃなく商売道具のように扱っているように感じたのかもしれない。ここに住みたくないと言うから、あのマンションを買ったの。そして、あの子が何をしていても見ないようにしてきた…」
那愛魔の告白を聞いているうちに、だんだん俺は腹が立ってきた。
「本当に悩んでます?礼王にとって何が幸せか真剣に考えてますか?」
那愛魔は驚いたようだった。
「どうして私が真剣じゃないなんて言うの?こんなに悩んでいるのに…」
「何を悩むんですか?さっさと、礼王を解放してあげればいいじゃないですか!礼王には確かに才能があります。きっといつか、あなたのような歌姫になると思います。でも、そのためには、今、礼王にあなたの影武者のようなことをやらせるべきじゃない!」
礼王の涙、あの時の諦めたような表情が思い出された。
「礼王をただの高校生に戻してあげてください。今の時間は礼王にとって貴重で、もう二度と戻ってこないんです。歌うのは大人になってから、本人が選べばいい」
那愛魔がじっと俺を見た。つと立ち上がって、俺の方に近づいてきた。
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