第23話

俺はあわあわしながら、那愛魔ナアマに事情を説明した。礼王レオがあれほど簡単に納得したのに比べて、那愛魔は、ずっと疑い深い目でジトッと見つめてくる。そりゃ、無理ないか…。


パラレルワールド云々はともかくとして、俺は決して礼王にふしだらな感情は持ってないこと(煩悩に関しては般若心経の力でなんとか封じこめてるし!)、むしろボディーガード的な役割でここに泊めてもらってること、を必死で訴えた。


「まぁいいわ。どうやら悪い人ではなさそうだし…。でも、頼りになりそうかどうかって言ったら…」

そこで那愛魔は、失礼なことを言いそうになってることにハッと気づいたらしく、なんとか踏みとどまってくれた。




数週間後、那愛魔から呼び出された。

指定の場所に行くと、リムジンが迎えに来ていた。運転手がドアを開けて恭しく頭をさげる。車内の窓にはカーテンが引かれていた。

運転手は

「申し訳ありませんが、外はご覧になれません」と言った。

そのまま車は走り出し、1時間ほど走ったところで静かに止まった。


運転手がドアを開けたので、外に出てみると、美しい庭園の中に豪邸が建っていた。運転手がチャイムを鳴らすと、真っ白なワイシャツ、黒いパンツとネクタイ姿の男性がドアを開けてくれた。執事ってこと?

「那愛魔さまがお待ちです。中へどうぞ」

執事らしき男性に案内されて、2階へと上がっていった。


2階は大勢でパーティができそうな広い一室で、フルオープンの窓が開けられて、テラスのテーブルにはお茶の準備がされていた。

那愛魔は、座り心地の良さそうな大きな椅子にゆったりとくつろいでいる。俺を見て、

「どうぞ、座って」とそばの椅子に向けて手をひらひらと振った。


俺は緊張しながら、2人くらいは座れそうな大きな椅子にちんまりと座って、那愛魔の次の言葉を待った。

那愛魔は、執事に下がるように言ってから、話し始めた。

「一平さん、ちょっと聞いてほしいことがあるの」

「何でしょう?」

「私、礼王のことをほったらかしで、ちゃんと面倒を見て来なかったの。それを後悔してるんです。あの子、夜のお店でアルバイトしてるみたいだけど、止めさせた方が、いいんじゃないかと思って…」

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