第22話

「大丈夫って言うから、一口だけ飲ませたのに…。しっかりしてくれよ…」

「ん…。大丈夫、大丈夫…」

「大丈夫じゃないだろう…」


なんとかマンションまでたどり着き、ぐったりしている礼王レオを部屋に放り込んだ。とりあえず、ベッドの上に乗せておけばいいだろう。余計なお世話をして、誤解されても困るし…。


「お休み…」

部屋を出る前に声をかけると、つむったまつ毛が少し震えた気がした。


俺も自分の部屋に入り、寝ることにした。1日中遊んでクタクタだから、シャワーは朝でいいだろう…。

ベッドに倒れ込んで、夢も見ないくらいぐっすり寝た。




起きたら、昼だった。

あくびをしながら、まだぼんやりしている頭をシャキッとさせるためにコーヒーでも飲もうとリビングに行き、ソファに女性が座っていることに気づいた。


「あ、えっと…。どちら様ですか?」

女性は驚いた顔で

「あなたこそ、どなた?何故ここにいるの?」と言った。

そこでようやく俺は気づいた。


「あ…!…那愛魔ナアマ!…さ…ん…?」

「そうですけど、あなたは誰なの?礼王が家に上げたの?」


わ、どうしよう…?憧れの歌姫が目の前にいる!それだけでもパニックなのに、俺が誰かの説明…?このわけのわからない状況を上手く説明なんてできない…。頭がおかしいやつだと思われるに違いない…。


俺が、あわあわと口ごもっていると、礼王が起きてきた。

「一平起きてたんだ…。コーヒー淹れてよ…」


「礼王、その格好は何?」


そういえば、礼王は昨日の服のまま寝てしまったんだった。ノースリーブのヘソ出しにボロボロダメージジーンズだ。


「そんな服で寝たんじゃないわよね?」

「あぁ、来てたの?どんなカッコで寝ようが勝手でしょう?いつもほったらかしのクセして、母親ヅラしないでよね!」


いきなり親子喧嘩が始まりそうな気配に、俺はますます慌てて、あわあわが止まらなくなった。


「れ、礼王、俺がここに泊めてもらってる事情を…ほら…説明…ね?ご、誤解のないよう…」


礼王は、意地悪い笑顔で言った。

「あ、一平はね、オオサカってとこから来たの。泊まるとこが無くて困ってたから、私が拾ってきたの」


「オオサカ?どこなの、それ?あなた、まさかいい歳して、礼王と付き合ってるんじゃないでしょうね!」


あわあわ…。誤解無いようにって言ってるのに、誤解させてどうするんだ!そして、いい歳って…。こう言っちゃなんですが、那愛魔も大して変わらない歳ですよ…。いや、イカンイカン、世界の歌姫に失礼なことを…。そんなこと、考えるだけでも万死に値する…。

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