第21話
俺は腕に当たる肉まんの弾力のことを考えないようにするために、般若心経をとなえながら、観覧車に乗り込んだ。
「わ〜、見て見て!ちっぽけな人間どもがアリみたいだよ!」
「やめなさい、その言い方…」
「景色、綺麗だね…」
遊園地のさまざまなテーマに合わせた建物が、外国の街並みのようで、そろそろ暮れてきた夕陽に照らされてオレンジ色に輝いてみえる。
夕暮れの景色は、どこにいても何故か懐かしいような寂しいような気分になるから不思議だ。
騒いでいた
「ん?どうした?」
礼王は俯いたまま黙って、ただ首を横に振った。
破れたジーンズに一粒の雫が落ちた。
俺は心配すると同時に警戒した。また例のやつか…?
肩に手を置くか、迷って、あと2、3センチのところで手をとめる。
礼王は顔を上げた。何かを諦めたような表情が一瞬見えた気がしたが、気のせいだったか…。
すぐににっこりと微笑んで、
「何でもない…。夕焼けを見るとちょっと寂しいような気持ちになっちゃうだけだよ」と言った。
礼王がこんな感じなのは見たことない。ますます怖くなったが、ここはスルーだ。
「そろそろ、メシ食うか?腹減ったよな…?」
「ん。そうだね…」
「ここの食事は見栄え中心だからな…」
「それがいいんじゃない。やっぱりおじさんにはわからないか〜」
「うるさいっ!俺だって、可愛い盛り付けでテンション上がるわっ!」
「無理しないでいいよ〜」
それから俺たちは、パーク内のレストランで食事した。礼王は、また楽しそうな様子に戻り、たくさん食べて、内緒で一口だけビールの味見もした。
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