第20話
ジェットコースターの最初の上り坂はあり得ないほどの急勾配だ。不安を煽るようにゆっくりと登って行く。この瞬間が一番胸を締め付けられるようで息苦しい。
頭の中に警告音が鳴り響く。
危険!危険!危険!
やがて目の前の線路が途切れ、広がる青い空。
その先には線路は無く、あの頂上へ到達したら、そのまま空中へ放り出されてしまうのだ。
あぁ、今その頂上をゆっくり越えて行く…。
「あ”〜~っっ!!んぎゃ〜〜っっ!!ほぎゃ〜〜っっ!!」
一気に断崖を滑り降り、身体は右に左に暴力的になぎ倒される。バーを握りしめる手がもぎ取られそうになる。頭はまだ身体に付いているだろうか?
俺の脳みそと全身の筋肉は硬直したまま、ようやくコースターはスピードを落としプラットフォームへと静かに到着した。
「一平?もう終わったよ。早く降りなきゃ」
「一平、顔色悪い〜!何その固まった顔〜!」
礼王はゲラゲラ笑っている。
「う、うるさい…。大したこと、なかったわ…。こんなの普通の電車みたいなもんだ…」
「ウソだ〜!あ”〜〜っって叫んでたよ」
「いや、俺は口を閉じて1ミリも開けなかった!」
「うそうそ…」
礼王のクスクス笑いが止まらない。
「ま、まぁそんなことより、次はどこに行きたい?」
「じゃあ、観覧車乗ろっ!」
また礼王が俺の腕に巻きついて、下から覗きこんできた。腕に当たっているのは、これは、これは…肉まん…そう、肉まんなんだ。
必死で意識をそらそうとすればするほど、なんだか腕の皮膚感覚がどんどん研ぎ澄まされていくような気がする。
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