第19話

今、俺はテーマパークにいる。SSJ(スペース•スタジオ•ジャパン)と言うんだそうだ。名前も見た目もアトラクションも、ほとんどUSJと同じと言っていいだろう。


そして、俺の腕に絡みついているのはいつもと違ってすっぴんの礼王レオだ。今までの礼王とは別人のように、普通の女子高生らしく無邪気にはしゃいでいる。こうして腕を組んでいても、決してデートなどとは思われないだろう。親子だと思われているに違いない。


「ねぇねぇ、一平、次はジェットコースターに乗ろうよ!」

「いや、俺はジェットコースター苦手なんだよ…。上がったり下がったり、気持ち悪くなる」

「つまんないこと言わないで!さ、行くよ!」

こういうところは、相変わらずだ。


それにしても、礼王の美貌はメイクをしてなくても人目を引いてしまう。

アイシャドウやつけまつげは無くとも、大きな眼は長いまつ毛に縁取られているし、唇は口紅も塗っていないのに、綺麗なサクランボ色だ。ノースリーブのカットソーは、身体にぴったりフィットして、形の良いバストを強調している。しかも、いつものようにヘソの上までしか布地はない。ジーンズは、これでもかというくらいビリビリに破けていて、その裂け目からチラチラと脚がみえている。


「ちょっと今日の格好は、挑発的過ぎないか?」

「これくらい普通だよ。一平はおじさんだから、知らないか…」

「余計なお世話だ!」


確かに、今まで若い女の子のファッションなど気にしたことがなかったが、周りを見ると、こういう格好のたちを何人も見かける。だが、礼王のスタイルの良さや顔立ちの華やかさはその中でも異彩を放っていた。


通りかかる人たちは、みんなチラチラと礼王を盗み見ている。ちょっと誇らしい気もするが、他人の視線がうっとおしい。


「いつもこんな感じなのか?」

「ん?何のこと?」

「ほら、チラチラ見られてるの…」

「あぁ…。もう慣れっこだよ。気にしないことにしてる」


そっか…。美しいってことはいいことばかりじゃないんだな…。

だが、そんなことにはお構いなしに、礼王はテーマパークを満喫しているようだ。


気づいたら、俺たちはジェットコースターの座席に座って、カチカチと不気味な音を鳴らす線路をゆっくりと登っていた。

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