第18話

礼王レオの歌声はまるで那愛魔ナアマが歌っているかのようで、突き抜けるように力強く、それと同時に透き通るような声だった。

間近で聴くと、身体全体に響きわたって、頭の芯が痺れるような感覚だ。

俺は那愛魔のコンサート会場にいるんだっけ…。


気付いたら曲は終わり、客たちの大歓声の中、俺は魂が抜けたように立ち尽くしていた。


歌姫はさっさととマイクをチャドの前に置いて、女王の玉座に戻った。まるで、歌なんか歌ってませんというように、また無表情でグラスに挿したストローをくるくると回していた。


俺は悔しそうなチャドの前をすり抜けて、さっき素晴らしい歌声を聴かせてくれた彼女のところに走り寄って抱きしめた。礼王はもがいて腕からすり抜け、怒った顔で

「馴れ馴れしく、抱きつかないでよ!」

と言った。


俺は彼女が怒っているのも気にならないくらいテンションが上がっていた。目の前に那愛魔がいる、という錯覚に陥っていたのだ。


「素晴らしい歌声でした!一緒に歌えて光栄でした!」

興奮した俺に礼王はあきれたように

「何言ってるの?アタシは那愛魔じゃない」

と言ったが、俺はその言葉すら耳に入ってこなかった。


「Mr.一平、一人で歌わなかったので、失格です」

そう告げられて、俺はハッと現実に引き戻された。

そうだ、これはチャドとの対決なのだった。

「え?でも、飛び入り参加を俺が頼んだわけでは…」

抗議すると、司会をしていたキャストの女の子は、にっこり微笑んだ。

「ただし、特別ルールがあるんです」

「特別ルール?」

「今回の対決は、礼王のデートを賭けて行われたので、礼王がゲームに参加した場合、特別ルールが適用されます」

「もしかして、俺の勝ち…?」

「その通りです!Mr.一平が見事、礼王とのデートを勝ち取りました!」


デートを勝ち取った?いや、俺は、礼王がチャドとのデートを嫌がっていたから対決しただけで、礼王とデートしたいわけでは…。


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