第16話

ダーツ対決は、俺が2投目で56点、チャドは1投目にしてすでに50点とっている。俺はピンチだ。


チャドは、またリラックスした様子で、スッと腕を振った。

あ~、またダブルブルか?

と思ったら、どうやらほんの少し上にそれていたらしく、1のシングルとの判定が出た。チャドはギリギリ食いしばった歯を覗かせてくやしがっている。

観客たちは大ブーイングだ。面白ければどっちでもいいんだろうな…。


これはどちらが勝つかわからなくなってきたぞ。まだまだ俺の勝つ可能性はある。ここはやっぱりダブルブルを取りたい!


俺もチャドのフォームをイメージして、軽く腕を振った。


「Mr.一平、ダブルブルです〜!」


やったっ!これは勝ったな…。客たちの興奮はマックスだ。口笛や足踏みや、怒鳴り声で耳が潰れそうだ…。


チャドの真剣な顔を、もうムリムリ…と、俺は余裕で見ていた。

チャドは、今までのように構えてすぐに投げるのではなく、的をじっと睨みつけて集中している。そして、スッと腕を振った。


「Mr.チャド、20のトリプルで60て〜んっ!」


ナニー!?ここでそんなん出す?あいつ、イケメンキャラだったの?

俺は呆然と立っていた。

チャドが近づいて来て、俺の耳元に

「一平 にい、この三番勝負、どうやら俺がもらっちゃうみたいよ…」

ささやいた。

くっそ〜!!いやいや、まだもう一つ対決は残ってますから!


しかし、俺はイヤな予感がしていた。

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