第14話

「では、これから、Mr.チャドとMr.一平の三番勝負を始めま〜す!」

何故かキャストの女の子がノリノリでラウンドガールのように2人の名前を書いたボードを掲げている。


丸テーブルがホールの真ん中に引っ張りだされ、そばには玉座のような立派な椅子に、礼王レオが長い脚を組んで女王のように座っている。

礼王はアイスチャイをストローですすりながら、

「そのほうら、おのおの死力をつくすがよい」とのたまった。


“Chat Noir”の客たちが割れんばかりの拍手と口笛で声援を送る。

どうやら俺たちは、店のイベントとして勝負させられるらしい。

「三番勝負って…何を…」

「第1ラウンドは…腕ずもう対決で〜す!」


案外普通だった…。よかった、剣とかムチとかが出てこなくて…。

俺は筋肉には自信があるので、チャラ男のチャドなんか相手ではない!

自信満々で組んだのだが…。

い、意外と細マッチョだったのね、こいつ…。


組んでしばらくは、お互い相手の出方を見ていたのもあって、握りあった拳はどちらへも動かなかった。だが、俺は徐々に力を込めて、ジリジリと押していった。


どうだ、焦ってるだろうとチャドの顔を見たら、涼しい顔だ。俺はちょっと焦って更に力を込めようとした瞬間、チャドがものすごい力で跳ね返してきた。

ヤバい、ここで焦ったら負けだ。冷静に、冷静に…。

ガッとチャドの力を受け止めて、まずはそれ以上押されないように食い止める。

それから、今まで温存してた全精力を使ってグイグイと押していった。


チャドは必死で止めようと歯を食いしばっているが、もはや腕はかなりテーブルの板上に近づいている。こうなったら、ここから返すのはもう無理だ。チャドは急に力を抜いて、

「あ~、負けた〜」と言った。

お互いにハァハァいいながら、なんだか相手が愛おしくなって、思わず俺とチャドは抱き合ってお互いの健闘を称えあった。


拍手や口笛が鳴り止まない。みんないい勝負に感動したらしい。

礼王の方をうかがってみると、なんと、あいつはソッポを向いて、見てないではないか!

おいっ!お前のために戦ってるんだぞ!

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