第13話

先日の着せ替え事件(事件!?)以来、なんとなく礼王レオがよそよそしい気がするが、触らぬ神に祟りなし、俺は気付かないふりをして過ごしていた。


そしてついに、その日が来てしまった。

チャドが店に来て、礼王を指名したのだ。


「なんで、アンタなんかに付かなきゃなんないのよ!」

「もぉ〜、素直じゃないな〜、レオちゃん!ホントは指名もらって嬉しいんでしょ?一緒にダーツする?それともカラオケ?」

「キモッ!さっさとお酒でも頼んで、黙って飲んで」

「ヤダな〜、黙ってたら、ここに来た意味ないでしょ?じゃ、おしゃべりしようか…」


「……」

礼王は氷の女王みたいに冷気をまとっている。

「ねぇねぇ、レオちゃん…れおちゃ〜ん…もしも~し!」

「うるさいな…。黙っててって言ったでしょ?」

かなりドスが効いている。チャドじゃなかったら、青ざめて黙り込むほどの低音だ。

しかしチャドはたとえ北極の氷山の上にいようとも、冷気など感じない体質らしい。

「ねぇ、ゲームしようよ!オレが勝ったら、今度外でデートしよう!」


通りかかった俺はチャドの耳元に

「ムリムリ…諦めたほうがいいぞ…」とささやいた。

すると、チャドは俺の方を振り返って

一平兄にいからも、何とか言ってよ〜」と馴れ馴れしく言ってきた。

いつ俺がお前のアニキになったんだ?


すると、礼王が

「じゃあ、一平とチャドが対決したらいい。勝った方とデートするよ」

と言い出した。

なんで俺が…?

「いやいや、俺は関係ないでしょ?こんな星人の言うことに乗っかる必要ないだろ?」

「いいから!アタシがやれって言ってんの!」

また女王さまですか…?


いったいどういうわけなのか…。いつの間にか俺とチャドが対決するという話が、俺の反対意見を無視して、決定されていた。

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