第12話

「“Chat Noir”の衣装、新しいバリエーション考えようと思ってるの。参考までに一平の好みも聞いてあげる」

やれやれ、女王さまだなぁ…


「高校の制服なんてどう?女子高生が好きって男もいるでしょ?」

自分の部屋で制服に着替えて、見せにきた。

「う~む、ロリだな…。俺の好みではない」

「エラそうだな…。じゃあ、大人っぽくロングドレスとかどう?」

「なんでいきなりロングドレスなんだよ…」


文句を言ってみたものの、着替えて戻って来た礼王レオを見て、口がポカンと開いてしまった。胸元が大きく空いたドレスを着た礼王のスタイルの良さといったら!


小さな顔からすっと形よく伸びた首のライン。華奢な肩は、抱きしめたら壊れてしまいそうだ…。子どもの頃、学校で孵化させたひよこのことを思い出した。手のひらの上で震える小さな命、自分がなんと醜く大きく恐ろしい力を持っているのか、と怖くなったものだ。


そして、鎖骨の窪みの完璧な美しさ。そこから、なだらかに膨らむ小高い丘。俺は丘の上の草原で気持ちのよい風に吹かれて、空を見ていた。柔らかな草の葉は、風に吹かれると、波のように順序よく銀色の裏側をみせては、また緑に戻っていく…。


いっぺい… いっぺい…? 一平!


「一平!何ぼんやりしてんの!?感想言ってよ!」


「あ、あぁ…。ごめん、別世界に行ってた…」

「はぁ?訳わかんない…。もぉ〜、ちゃんと見てる?」

「見てる見てる。う~ん、いいんだけどな…」

「だけど、何?」

「他の男には見せたくないな…って、あ…」

しまった、本音がダダ漏れた…。これは怒られるヤツだ…。勘違いするな、とかアタシはアンタのカノジョじゃない、とかなんとか…。


礼王は驚いたように目を見開いて、それから徐々に頬のピンクが濃くなっていった。

「な、何バカなこと言ってるのよ!」


それから、あわてて衣装をかき集めて、

「もういいや。一平の意見は参考になんない!」

と部屋に戻ってしまった。


あ~、失敗した…。やっぱり怒らせたみたいだ。礼王のいろんな衣装を着た姿を眺めるという幸運ラッキーを自ら台無しにしてしまった…。

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