第10話

「おい、ちょっと止まれ!」

俺が声をかけると、チャラ男星人は振り返った。


「何だ?アンタ、だれ?」

那愛魔ナアマのマネージャーだよ」と俺はウソを言った。

「“なあま”って誰だっけ?」

「何をとぼけてるんだよ、お前、那愛魔と付き合ってるんだろう?」

「オレは1人とは付き合わない主義。かわいい娘がいっぱいいるんだから、1人に決めたらもったいないっしょ?」

「何だとぉ!?ふざけるな!那愛魔はただのかわいい娘じゃない!みんなの憧れ、女神なんだぞ!」


「あれ?もしかして、あのひとのこと?」

チャラ男星人は少し首をかしげながら言った。

「あのひととは一回会っただけ。オレはやっぱり若い娘がいいわぁ…」

「お前、今、全宇宙のほぼ半分を敵に回したぞ」

「オレの好みを言っただけじゃん。オレは若い娘が好み。熟女が好みってやつもいる。それが多様性ってもんじゃん?」


なかなか、真っ当なことを言うじゃないか?だがそんな正論は、ゴルゴーンおんなたちには通用しないのだ。

「お前ね、本音を言えばいいってもんじゃないのよ。本音は、胸にしまっておくか、本当に信用できるやつにそっと言うか、穴ほってそこに叫んで埋めておけっ!」

俺は胸にしまいすぎて、メンタルやられたけどな…。


「そんな我慢して生きるなんて、オレはやだな…。もっと、言いたいこと言おうぜ!」

俺はなんだか、無邪気なチャラ男星人に親近感を感じ始めていた。


「一平、ちょっとどいて!」

いつの間にか、礼王レオが、銃をチャラ男に向けて狙いを定めていた。

「礼王、ちょっと待て!そいつは那愛魔と付き合ってるわけじゃないらしい」

「はぁ?どういうこと?」

「ねぇねぇ、オネエさん、名前、レオって言うんだぁ…。めちゃくちゃかわい~ねぇ!“Chat Noir”にいたよね?キャストさんなの?オレ、チャドっていうの。チャーって呼んでいいよぉ~」

カチャッ!!礼王が安全装置を外す音がした。

「待て待て!撃つな!こいつは悪いやつじゃないよ、多分…」

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