第5話

俺は大阪の職場近くの街にいたはずなのに、いつの間にマホロシティなんて変な名前の街にいるんだろう。

ここには俺の世界にいたのと同じように歌姫の那愛魔ナアマがいて、いるはずのない異星人が当たり前のようにいる…。

なんだか頭が混乱してきた。

俺は帰る家があるんだろうか…。

あったとしても住所がわからない。なにしろ、ここは大阪ではなくて、マホロシティなんだから…。


「俺、どうやら帰るところも無くなったみたいだわ…」

「え?どういうこと?」

礼王レオに俺の世界の話、そしていつの間にかこの世界に来ていたということを説明すると

「本当なの?なんか怪しいな〜」と礼王は俺の目をじっとのぞき込んだ。長いまつ毛に縁取られた瞳が、思った以上に深い色あいで、俺は少し動揺してしまった。


「嘘じゃない!信じてくれよ…」と言いつつ、確かに何の証拠もないな…と思った。

しばらく俺の顔を見つめていた礼王は、

「わかった。信じるよ」と言った。

「え?信じてくれるの?危ないおっさんかもしれないよ?」

「アタシもいろんな危ない経験はしたって言ったよね?その経験から、なんとなく一平は大丈夫って気がするの」

信じてもらえたのはよかったが、なんとなくナメられてる気もする…

「じゃ、とりあえず今晩は、もう帰ろ」


行くところのない俺は素直に礼王の後について行った。




礼王が住んでいるのは、思った通り、金持ちが住んでそうなタワーマンションだった。この世界、俺のいた世界とほとんど変わらないな…


「まぁとりあえず、好きなところでくつろいでて…。部屋はいっぱいあるし、どこ使ってもいいよ」

「じゃあ、私シャワー浴びてくるね」と言って礼王はリビングを出て行った。


俺はジロジロと豪華な家具や置物を見ながら、広いリビングを一周して、高そうな革張りのソファに腰をおろした。

「17でタワマンか〜。住む世界違うわ〜」

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