第13話 【クロコの正体】
「ソラ! もう現場検……よ、用事はおわったの?」
「あぁ。真白、小鳥遊凛音から離れてこっちへこい」
「ちょっとソラ、どうしたのよ。 あたしね、小鳥遊さんと友達に……」
「小鳥遊凛音がクロコだ」
ソラが口にした言葉の意味を、あたしは理解できずにいた。
「小鳥遊さんが……クロコ? ちょ、ちょっと待ってよソラ、それはおかしくない? だって――」
「図書室の帰り道、小鳥遊凛音は渡り廊下の窓から西園寺マリンが一人で部室にいるところを目撃した……という話だったな。だが、それは彼女の虚言、嘘だ」
「……嘘?」
「あぁ。四日前の夕方、図書室がある校舎二階への立ち入りは禁止になっていたのさ。エアコンの設備点検でね」
あたしを先に帰らせた後、ソラとイロハはタイムウォーカーで、四日前の校舎二階を見に行ったらしい。
「じゃあ、さっき部室の窓から校舎を見上げてたのって……」
「ああ、もしかしたらって思ったんだ」
「でも、それって嘘っていうか、勘違いかも知れないよ? 別の場所から部室を見たのかも。それでなんで、彼女がクロコになるの?」
「陸上部の部室は、その立ち入り禁止になっていた校舎二階の渡り廊下からしか見られない。建物の位置関係を思い出してみろ」
言われてみれば、ソラの言うとおりだ。
陸上部の部室は、校舎一階からは植え込みが邪魔で見られないし、校舎三階からは屋根しか見られない。
校舎二階の渡り廊下だけが、部室の中を見ることができる。つまり――
小鳥遊さんは部室を見ていない……っていうことは、西園寺先輩を見ていないのに、彼女の犯行を知っていたってこと?
でも、それって本人か指示をした人間だけなんじゃ……あ、そっか。
「……だから小鳥遊さんがクロコなんだ」
「そう、こいつは西園寺マリンをクロコに仕立て上げるために、彼女の犯行を見たと、お前に嘘の証言したんだ」
ソラは小鳥遊さんに視線を移し、
「さて、言い逃れは出来ないぜ、小鳥遊凛音……いいや、漆黒の民、クロコ」
「…………」
小鳥遊さんは、無言であたしを見た。
その瞬間、彼女の前髪の奥にひそむ、不気味な赤い瞳と目が合った。
キーン!
「んっ! なにこれ、耳が……」
まるで山の頂上でなるみたいな、耳の中をぎゅっと押されたような感じがする。
あたしは思わず目をつむった。
そして、しばらくして耳なりが止まって目を開けると――
夜色を塗ったような、真っ暗な闇が広がっていた。
ジャングルジムやブランコが見当たらない。
ここ、公園……じゃない?
ソラは周囲を見渡して、
「異空間転移……これもネガパウダーの力か」
そうつぶやくと、小鳥遊さんに目をやった。
「……ダリぃ」
「小鳥遊……さん?」
「ダリぃ、ダリぃ、あーダリぃ! タイムウォーカー?……ったく、そんなふざけた能力もってたのかよ、お前?」
「いいや、タイムウォーカーはイロハの能力だ。まぁ、当の本人は保健室のベットで爆睡中だがな」
「ちっ! あの単細胞女のしわざか……」
小鳥遊さんはまるで別人のように口調が急に変わった。
「ねぇ、小鳥遊さん。友達の話も嘘、なの?」
「友達? はぁ? なにいってんの? キャハ! キャハハハハハ! あ~、おなか痛ぁ~い。アンタさぁ、どんだけめでたい性格してんのよ? さっすがはこの区域の『人柱(パワースポット)』ね!」
人柱?
それってどういうこと?
ソラがあたしの前にたちふがった。
「真白、コイツの目的は初めからお前だったんだ。お前はこの区域、虹色町の人柱だからな」
「な、なんであたしが……それに人柱ってなに?」
「あとで全部話してやる。今は、目の前の敵に集中しろ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます