第6話 【あたし、シェリフるに入る!】

「倒した……の?」

「はいっす! もう安心っすよ、真白ちゃん!」

 ソラとイロハは、いつの間にか、元の格好に戻っていた。

「大丈夫か?」

「う……うん、ありがとう」

「礼はいい。それよりも、なにがあったのか説明してもらおうか」


 自宅へ帰ったあたしは、木葉のことや坂本くんのことをソラにくわしく説明した。

「……なるほどな。それはクロコが仕掛けた罠だな」

「クロコ? 誰それ?」

「あーしらの母星、カラフルの近くにある、『惑星ブラック』の漆黒の民っす!」 

 ブラック? 

 漆黒の民? 

 うわ~、またわけわかんないこと言い始めたなぁ。

 イロハによると、クロコっていうのは、惑星ブラックの独裁者ダーカンから『人類無気力化計画』の遂行を命じられて、地球に派遣された漆黒の民で、そのダーカンって人に忠誠を誓ったスペシャリストらしい。

 はぁ……イロハの説明はわかりやすいけど、それでもやっぱり、頭使うとものすごく疲れる。あー、チョコ食べたいよ~。

「それで、『人類無気力化計画』っていうのは何なの?」

「他の惑星へ潜入し、ネガパウダーを駆使して人々をバグらせ、無気力化させることだ」

「ネガパウダー?」

 また次から次へと知らないことだらけ。 

「あぁ、物体にふりかけることで化学反応を起こす。それはやがて、ネガアイテムとなり、触れた者、身に付けている者の心を侵食するんだ」 

「えっと……じゃあ、坂本くんが持っていた消しゴムに、そのネガパウダーがふりかけられてたってこと?」

「そうっす! 更にやっかいなことに、ネガアイテムは所有者から離れると、さっきみたいなネガモンスターになっちゃうんすよ!」 

 じゃあ、坂本くんが不登校になってたのは、そのネガアイテムのせいだったんだ。

 ん? っていうことは……もしかして――

「木葉も……ネガアイテムが原因で、あんな風になったってこと?」

「あぁ、まず間違いないだろう」

「……そっか。あれ? なんだろうコレ」

 目からポロポロと涙があふれ出てくる。 

「いや……ちょ、ゴメン。全然泣くつもりなんてなかったのに、あれれ? なんでだろう……」 

 涙が止まんない。

 今はさっきみたいに悲しいわけじゃないのに。 

 両手で涙をぬぐってもぬぐっても、涙は止まらない。

 あ……そっか、そうか。あたし、きっと今、嬉しいのかも知れない。

「ホント、ゴメン……ね。ちょっと、ちょっとだけ待って……ま……ううっ、ううう! うわああああああああああああああああああん」 

 木葉が変になっちゃったのは、あたしのせいじゃないんだ。

 あたし、木葉に嫌われたわけじゃないんだ。

 良かった……本当はまだ全然良くないけれど、良かった。 

 うん、良かった! 

「真白ちゃん、大丈夫っすか?」

 イロハが心配そうにあたしの顔を見上げる。

「あ……ご、ごめん。もう大丈夫」

 今日、二回目のギャン泣き、しちゃった。

「ねぇ、二人にお願いがあるんだけど」

「なんだ?」

「あたしをシェリフるに入れてほしい」

 ソラとイロハは顔を見合わせた。

「……え~っと、真白ちゃん、それはどういうことっすか?」

「木葉は、そのネガアイテムのせいでおかしくなっちゃったんでしょ?」

「そうっす」

「それを壊せば木葉は元通りになるんだよね?」

「そう……っす」

「だから、シェリフるに入るの!」

「いや、それはあーしらの任務でぇ、慎重に調査してから……」

「調査? そんなのんびりしたことやってる暇ないよ! 今すぐにでも木葉を呼び出して、ネガアイテム壊さないと!」

「真白、落ち着け」

「……あ」

 あたし、なんかあせってる。木葉を元に戻せると思って。

「ゴメン……」

「イロハの言う通り、これは俺たちに課せれた任務だ。地球人を守ることが我々シェリフるの使命である以上、お前を危険な目に会わせることは出来ない」

「わかってる、わかってるよ。さっきみたいなヤツがまた出てくるかも知れないんでしょ? でも……でもね、あたしは木葉を助けたいの! だから協力させて! お願い!」

 ソラはしばらく考えこんだ。

「ソラ先輩、真白ちゃんの覚悟は本物っすよ。それに、協力してもらえれば、ネガアイテムを仕掛けた、クロコを見つけられるかも知れないっす!」

 イロハがそう言うと、ソラはあたしの方に向き直った。

「本題に入る。南雲木葉の状態を『錯乱状態(バグ)』と断定。ネガアイテムを特定して破壊する。捕捉として、星野真白をシェリフるの仮隊員に任命する」

「仮……隊員? それって」

 あたし、シェリフるに入れるってこと?

「よかったっすね、真白ちゃん! これであーしら仲間っす!」

「いいの?」

「いいも悪いも、お前の意思は固そうだからな。それに、俺たちは不時着してかなり不利な状態だ。協力者がいれば、任務も有利に遂行出来る」

「……ソラ。ありがとう」

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