第21話 高スペック許嫁
【雅さんお掃除ロボット買ったんですか!?】
【はい。店員さんのオススメでスマホのアプリからスケジュールを設定出来る物を購入しました】
【アプリ使えるんですか?】
【店員さんに教えてもらいました。ちなみに名前変更可能なのでルンさんと設定しました】
私はお掃除ロボットのルンさんの後ろをトコトコと着いて行きながら雅さんと連絡を取る。
ちょうど新幹線に乗ったようで返信が早かった。
「あっ終わったのかな?」
ルンさんは全ての部屋を綺麗にすると自分の家である充電器の所へ戻っていく。
少し気になってメーカーを調べてみると、最新型で良いお値段のお掃除ロボットだった。
「………」
私はその数時間後、お昼を食べようと台所に行く。
雅さんが何か作ってくれているらしいのでメニューに悩むことなく冷蔵庫を開いた。
「な、何この量!?」
目の前にはこれでもかと敷き詰められたタッパー。
その1つ1つには主食、主菜、副菜など料理のメモが置いてある。
何だか嫌な予感がした私は続けて冷凍庫を開けた。
「雅さんって1日36時間あるの…?」
たぶん雅さんは2日では帰れないと思っているのだろう。
十分なくらいにある料理達。これを1人で平らげるのは難しそうだ。
ふと、私は台所の戸棚を見てみる。
そこには数えきれないほどのインスタントラーメンとインスタントの味噌汁が収納されていた。
『小春様へ。出来れば冷蔵庫の料理を食べて欲しいです』
私は置かれていたメモを読みながら頷く。明日あたり桜花を夕食にでも誘おうかな。
「………」
そしてまた数時間後。私は脱衣所で下着のまま立ち尽くしている。
そういえば洗濯機ってどう動かすのかな?なんて思っていると、床に大きな画用紙が落ちているのが見つかった。
『小春様へ。洗濯機の手順をこちらに書いておきます。小春様1人分の量でしたらまとめて洗うのがオススメです。以下手順↓』
可愛い絵柄で洗濯機のどこのボタンを押すか。そして洗剤はどれを使うかなどが記されている。
とてもわかりやすい。
ただ、画用紙の右下に居る謎の物体は何だろう。
「く、クマ?」
洗濯機を描くのは上手でも生物を描くのは苦手なのかもしれない。
通話の話題に困ったら聞いてみよう。
「………」
その数分後。私は裸のまま立ち尽くす。お湯を張ってないお風呂のフタの上。
そこには洗濯機手順と同じ画用紙が置かれていた。
『小春様へ。きっと面倒だと思ってシャワーで済まそうとしている前提で進めます。お風呂掃除は出来る時で構いません。なお湯船に入る場合は連絡ください。以下手順↓』
普段お風呂掃除をやらない私でも簡単に出来るようにこちらもイラストで記されている。
ただやはり生物は苦手なようで床にスプレーを吹きかけている動物?は何かわからなかった。
「………」
夕飯を食べ、シャワーを浴びてやること全てをやった後。私は自分のベッドへ寝転がる。
今日1日、雅さんが居ないはずなのに居たような感覚だった。
「あれを全部やってくれてたんだ」
家事をやらない私のためにわざわざお掃除ロボットを買って、食事は大量の作り置きを用意してくれた。
しかも洗い物が出ないように使い捨ての皿や割り箸までも準備されている。
他のことも含めて私に合った気遣いに頭が上がらない。
「雅さんって優良物件…?」
鬼族の妖怪とかを無しにして考えたらこれ以上にないくらい聖人だと思う。
この世の人間の大半は側に居て欲しいお嫁さんタイプだ。
「そんな素晴らしい人……じゃなくて妖怪が私の許嫁?」
今更雅さんのスペックに驚いてしまう。きっと出張が無かったらしばらくの間気付けなかった。
私はボーッと雅さんのことを考えているとスマホから音楽が鳴る。
時刻は夜の8時30分。雅さんと通話する時間だ。
あらかじめアラームをかけていた私は髪を整えながら机に向かう。
【雅さん、通話しても良いですか?】
スマホスタンドに置いてメッセージを送ると即既読がついた。
もしかして待っていたのだろうか。
私は雅さんからの返信を見て小さく笑うと通話ボタンを押す。
そしてビデオ通話を選択した。
「雅さん」
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