第2話 浴衣お姉ちゃんとシャッターチャンス ~キミのすべてがハイライト~

 ◆SE 数秒の間、おかきをかじるような咀嚼音



「あっ、これおいしいよ?」


「キミもどうぞ」


「こっちにお茶もあるからね~」


「あれ? キミ、お茶って平気だったっけ?」


「苦いのはダメだったよね。ブラックのコーヒーも無理でしょ?」


「えっ、飲めるの?」


「……無理して飲んでない?」


「いいんだよ、お姉ちゃんの前では強がらなくて」


「えっ? 高校受験の時はよく飲んでた……?」


「中3の時でもう……そんなに大人に……」


「だ、だって、ブラックコーヒーなんてお姉ちゃんでも飲めないのに……」


「キミが飲めるのに、お姉ちゃんが飲めないなんて恥ずかしいし……」


「あっ、あー!」


「キミがお姉ちゃんによちよちした!」


「頭をよちよちしてあげるのはお姉ちゃんの特権なのに!」


「……」


「ふふふ、でも気持ちいい気持ちいいだから、どっちでもいいか」


「キミ、ちょっと前はコーヒー牛乳しか飲めなかったでしょ?」


「8歳の頃の話? お姉ちゃんからすればそんな前に感じないんだけどなー」


「あ、おばさん扱いして」


「お姉ちゃんはまだ26歳なんだから」


「ア、アラサーっていえばそうかもしれないけど!」


「とにかく、キミより大人なの!」


「ふふん、お姉ちゃんのことをもっと尊敬してくれないとダメだよ?」


「あっ!」


「お茶菓子、食べてる~!」



 :◆声 推しへの愛が限界突破してるみたいな声・開始



「ゔぁー、どんぐりかじるリスみたいで可愛い!」


「お菓子食べてるところも可愛いよ!」


「あっ、ま、待って。写真撮るから!」※鼻息荒く



 :◆声 推しへの愛が限界突破してるみたいな声・停止


 :◆SE スマホのシャッター音連発



「いいよー、いいよー、可愛い!」


「可愛い~」


「はぁ~、可愛い~」


「わたしのスマホが可愛いキミで溢れちゃう~……」



 :◆声 数秒の間、息を整える呼吸音



「ごめんねー、お姉ちゃん取り乱しちゃった」


「突然の可愛いアクシデントに対応できなかったんだ」


「んふふ、ホーム画面に設定しちゃおっと」


「あ、キミはそのままモグモグしてていからね?」



 :◆SE スマホをタップする音



「これでよし」


「ね、今度はお姉ちゃんと一緒に撮ろ?」


「えー、いいじゃん。撮ろうよ~」


「確かにお外でもいっぱい写真撮ったけどー、お姉ちゃんはまだまだキミのが欲しいんだよね」


「お外で撮るキミと、お姉ちゃんと二人きりの時に撮るキミの顔は全然違うんだから」


「ふふふ、ありがと~」


「お姉ちゃんに優しいキミのことが好きだよ?」


「じゃあ、撮っちゃうね~」


「ほらほら、もっと顔を寄せてくれないと、いい感じに収まらないよ?」


「うん、そうそう」


「キミとお姉ちゃんのほっぺとほっぺがちゅーしちゃう距離で……」


「はい、このタイミング!」



 :◆SE スマホのシャッター音



「うふふ、撮れちゃった」


「キミが恥ずかしそうにしてる顔、すっごく可愛い」


「お姉ちゃんで照れてくれて、嬉しいな」


「うふふ」


「まだまだいーっぱい、お姉ちゃんと思い出つくろうね?」

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