第2話 儀式
理由は不明。
死因は自室での練炭自殺による一酸化炭素中毒。
遺書は無し。学校生活に問題無し。家庭でもトラブルは無かった。そして、とても自殺などするような性格ではなかった。
穂苗はおっとりとした感じの顔立ちに反して、強気な性格だった。
鵜飼を『
手のかかる妹だったが、一緒に居て楽しい存在でもあった。外に出ても勝ち気で自由奔放で、近所では『じゃじゃ馬』と呼ばれていた。
それでも秘めたる優しさがあり、友達想いで正義感が強く、人としてちゃんと筋の通った人間だったので、穂苗を悪く言う人は誰も居なかった。
極上の美女。穂苗はそう呼ばれていた。彼女の存在を知った全ての男子が惹かれたという。
女子にもファンは多く、妬む者も居らず、穂苗は誰からもゴールドのように扱われていた。
そう、穂苗は生まれ持った容姿、性格、環境に恵まれていた。
そんな彼女が自殺などするはずがない。だからもうすぐ一年が経つ今でも、穂苗が死んだ事実を受け入れられない者が多い。
鵜飼もその中の一人だが、鵜飼だけだろう。
毎日かかさず早起きして拝むことで、神様にその心意気を認められて『穂苗の蘇生』というご褒美が貰えると思っている者は。
「穂苗、もうすぐだから」
鵜飼は手を合わせて目を閉じ、穂苗の遺影に向かって『蘇生』を強く念じた。
祈りを始めてもうすぐ一年。キリの良いところで何かが起こる。
そう信じ、鵜飼は強く念じ続ける。
一分、二分、そして三分が経過したところで、鵜飼は目を開けた。
その時だった。
『ピンポーン』
インターホンのチャイムが鳴り響いた。
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