第10話


 忙しい日々はあっという間に過ぎ、今日は文化祭前日。残れる人は、放課後最終準備兼シュミレーションをします!と声を掛けたところ、普段は部活がある人たちも、部活が休みだから、と参加してくれたおかげで、ほとんどの人が教室に残っている。転入してきて一ヶ月でクラス代表っていうのは、なかなかに不安だったけど、指示にも慣れてきたし、何より男女の仲がいいから、女子が率先してやると男子も手伝ってくれるし…。女子は女子で、男子の扱いをわかっているから、『重いから助けて欲しいな…』とか『さっすが、身長高ーい!』とか言って上手くおだててるおかげで、めちゃくちゃ効率がいい。生徒会長曰く前代未聞の全部混ぜる作戦は、不思議なほど上手く進んでいた。

「海月ちゃん、ここの装飾これで大丈夫かな?」

「なあ、クラス代表〜ここはこれで補強だよな、確認頼むわ!」

文化祭を通して、最初はぎこちなかったクラスのみんなとも、仲良くなれて本当によかったと思う。忙しさは増したけどね、、。

 段々と準備が整って、衣装の確認も済んだ。今日は解散!明日から頑張ろー!とエンジンを組んで帰る。人が減っていくなか、私は帰ろうとしている哀翔くんを呼び止めた。

「哀翔くん!」

「ん?どうかした?」

「人工知能研究部の、ポスター、一応描いてみたんだ。」

クリアファイルから取り出して、哀翔くんに見せる。描いて欲しいって、きっとお世辞だけど、それでも描きたいと思ったポスター。

「…うっそ、まじで?」

やっぱり、突き返されるかな、、

「すげえ…ありがと、忙しかったのに、、まじで嬉しい。」

「え、あ…、うん!これで人呼びたいね!」

私たちの部活は、部活動一覧に載っていない。ただ、文化祭の展示一覧には書かれているから、ここで人を呼びこみたい。知名度が上がれば、部員も増えるかもしれない。

「そうだな…、一応ボランティア部の人が二日目以降は手伝いに来てくれるから。」

「そっか、見かけたらお礼言っとかないと。」

「そうだな、とにかく明日は俺ら二人で頑張らないとな。」

そんなことを言いながら、教室を出る。夕日の差し込む廊下を歩きながら考える。

 明日は文化祭一日目。明日は学校内のみだから、クラスと部活の運営でで回る時間は絶対ないだろうけど、二日目は回れるかな。夏海が暇なら一緒に回りたいけど、忙しすぎて誘ってもないな。

「あ、そうだ。」

思い出したように立ち止まって声を上げる哀翔くん。

「哀翔くん、どうかした?」

「…明後日、一緒に回らない?」

「……え?」


転入して一ヶ月半。ようやく恋愛イベント開催、する予感……?

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愛と呼ぶには程遠い。 夕凪 @matu_kaze

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