第7話
……忘れてた。この学校の日直すごい仕事量多いんだった。教室移動の時の消灯と施錠は分かるけど放課後日直二人は教室内の清掃と机の整頓しなきゃいけないんだった。あとなぜか机の中に荷物が残ってないかっていう謎点検。全部ロッカーにしまおうね!みたいなルールがあるらしい。
「…ってことをすっかり忘れてたごめん!!」
「いやぁしょうがないよ。全然遅くないし。」
今は絶賛謝罪中。想定より多かった日直の仕事に気を取られて、帰るのが遅れることを伝えるのすら忘れていた。ただ、流石夏海ということだろうか。昇降口で待っていてくれた。夏海最高。
「それにしても一緒に帰るの久々だね。」
「私が基本部活だし運動部だからね…」
夏海は私と違って、高校から運動部に転身した。中学は私と同じ部活にいたのに……。これが元々の体力とかセンスとかってことなんだろうな。
「そういえば、今度試合あるんだけど、来る?」
夏海の部活か……、夏海はバドミントン部だから屋内かな。まだまだ暑いから、外は嫌なんだよな。
「よく練習試合してる高校の体育館でやるの。」
「…じゃあ、行く。行きたい。」
「あんたほんと昔から外嫌いだよね。」
う……、まさか見抜かれているとは。
「暑いの無理……、」
「まぁ確かにそれはそうだけども。」
そんな意味がありそうで無い話をしながら駅に着いて、すぐ来た電車に乗る。
そういえば、哀翔くんには夏海の話よくしてるけど、夏海に哀翔くんの話ってしたことないかも。まぁそもそも一緒に帰れること自体少ないからしょうがない部分もあるんだろうけど。夏海は哀翔くんのこと知ってるのかな。
「ねぇ、夏海。」
「んー?」
下の名前だけで聞いても分からないかもしれないよね……苗字、なんだっけ。
あ、来栖だ。下の名前で呼びすぎて忘れてた。
「来栖哀翔って知ってる?」
「あー…あの茶髪のイケメンくん?」
やっぱり知ってるんだ。いや、まぁ背高いし、イケメンだし、運動できるし、欠点の方が少ないから何かしらで話は聞くか。どの部分で知ったか気になるから聞いてみようか。
「なんで知ってるの?」
「…海月、付き合ってるんじゃないの?」
「はぁっ!?!?」
ふと我に返って周りを見渡すと、結構な注目を集めていた。忘れていたけど電車内だった。
「……すみません、」
一応、謝ってから会話を再開する。
「…え、何付き合ってることになってるの?」
「だって、あの来栖?って人は女子と必要以上に関わらないことで有名だったのに。」
「…そうなんだ。」
私、全然話してるよね?………哀翔くんと部活が同じだから?それとも私が機械系好きなのを分かってくれるから?
「海月と来栖哀翔は付き合ってないのね?」
「…うん、全然そんなことないよ」
「そっかー、来栖哀翔は海月のこと気になってるというか狙ってるっぽいけどね。」
なんでそんなことわかるんだ……。これが恋愛成就率100%の学校に通う人の観察眼なのか?けど、哀翔くんに狙われ……?
「あのイケメンと?無理無理無理!」
「まぁそうだよねぇー。」
────次は、……駅、……駅です。
気付けばもう降りる駅で、二人で慌てて降りる。そのままの勢いに改札を抜けて、駅を出てからようやくゆっくりと歩き始める。
「…いやぁ乗り過ごすとこだった。」
「久しぶりに話せると会話が弾むね。」
ギリギリセーフだったーとにこやかに言う夏海に同調する。乗り過ごしてたら大変なことになってた。
「隣駅、電車少ないから歩くことになってたね。」
「そうだよねぇ、やばかったね。」
夏海は一回、部活帰りに寝過ごして大変なことになったらしい。隣駅が終点な上に、電車が少ないから想像通り歩いて帰ったらしい。私は寝過ごさないようにしないと。
「あ、もう分かれ道じゃん。」
「…ほんとだ、早いね。」
そんなに早く歩いて無くても、話が弾んで距離なんて関係なく早く感じる。
「すごい話戻るけどさ、海月自身は来栖哀翔のことどう思ってるの?」
「…哀翔くん、ねぇ?」
突然振られてなんとも言えない返答になる。
「面白い人だなぁとは思うけど、なんか完璧過ぎて畏れ多い部分あるんだよね。」
頭も良くて、運動できて、イケメンで高身長。割と本気で欠点が見つからない男だと思う。
「あー…そういう感じ?」
「そうだね、イケメン高身長文武両道とか。」
「別にそれでも良くない??」
それでも良い、ってどういうことだろう。
「釣り合わないーとか考えなくて大丈夫だよ。」
「う…、痛いところを突いてくるな。」
「そんなに重く捉えないの!カップル数ナンバーワンの高校なんだからさ。」
そうは言っても、きっと周りの人たちが黙ってないんだろうな。
「…うん、そうだね。」
とりあえず、当たり障りのないような曖昧な返事をして夏海と別れた。
「……来週辺りから大変になるね、海月。」
そんな事を背中に言われてるとは知らずに。
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