第5話


 興味が湧いたから、あとは消去法で『人工知能研究部』に入部してしまったけど…

「…これは部活なの!?」

「ちゃんと部活だよ、海月。」

転入して約一週間。私はほぼ毎日部活…という名の遊びに参加していた。部員は全員で二人。そう、哀翔くんと私の二人のみ。かといって部員を増やすわけでもなく、二人でのんびりとやっているが……

「流石に飽きたんだけど!?」

「いやぁ…データが必要なんだよ。」

そう、私は一週間連続でじゃんけんをしている。誰とって……あの精巧な腕と。今だって哀翔くんと話しながらじゃんけんを続けている。私の手元にはパソコン。『勝ち、負け、何を出したか』この三つを永遠と打ち込まなければいけない。

 初日のじゃんけんのほうがまだ面白かった。時々バグが起こるから、チョキを出そうとしたと思われる腕は中指を立ててしまっていたり、変に回路が絡まってアロハポーズなんかもしていた。ただ、今はもう淡々とじゃんけんを続けているだけ。バグもその都度二人で修正していくからどんどん完璧なじゃんけんマシーンとなっていく。

「このじゃんけんマシーンどうするの?」

一度電源を切って、哀翔くんに聞く。

「あー…それ、いずれは手伝わせたい。」

「手伝わせたい…ってどういうこと?」

「例えば、医療現場で器具を渡す人。」

器具を渡す人って、よく見る『メス』みたいな渡す人のことかな。それと腕の何の関係が………?

「えぇ!?あれをこれにやらせる気なの?」

「そう、それをやらせるなら……」

……なんか語りだしたぞ、この人。聞くだけわからなくなるなと思って放っておくことにしたら語りだす前に私の目の前へやってきて一言。

「…部員なんだからちゃんと聞いてね。」

「……はい。」

聞かなきゃいけないらしい。

「まず、今は『最初はグー、じゃんけんポン』をコマンドとして学習させてる。だからそれを『メス』とか器具の名前に変えれば良い。」

あ、まだついていける。コマンドを変えることで反応を変えるってことか。あれ、けどそれだと……。

「器具の位置が毎度ぐちゃぐちゃだとその腕もちゃんと言われたものを取れないね。」

今は一種類のコマンドに対して選択肢が三つある状態にあるということ。ただ医療現場で使うとなると選択肢はただ一つに決まるけれど、そのただ一つを見分けるようなセンサーや視力のような部分は腕には無い。………位置決めとか?

「…そうだな、初期位置は同じにしないといけないな。なんだ、分かってるんじゃないか。」

「いや、たまたまでしょ。」

なんとなく分かっただけで、その内部の基盤とか学習機能とかは全然わからないし。

「…ごめん、今まで理解者居なかったから。」

すると、哀翔くんからの素直な謝罪。別に、嫌だとは思ってない。ただ、理解できたことがちょっと嬉しくて。理解できなかった部分にちょっと興味が湧いただけで。

「…そっか、」

「海月、嫌じゃなければ、俺と研究してほしい。」

「……するんじゃないの?」

「…え?」

てっきりするものだと思ってた。あんなに意気揚々と話してきたじゃない。哀翔くんと私の部活。

「いいよ、やろう。私も研究する。」

「…いいのか?」

「うん、だって私、人工知能’’研究’’部だからね!」

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