第4話
放課後は、校内案内をする予定だったけど、部活動体験をしながら回ったほうが効率がいいし、覚えやすいんじゃないか、という先生の発案で、部活動体験をしている。今いるのは女子バスケ部。バスケ部は基本どんな学校にもあるから結構いいかと思って見学に来たけど、思ったより本気だった。多分ここに入ったら他の人との熱量差ですぐに私はバテてしまう。文化部出身の私には無理だった。
「ニ番マークして!」
「了解です!」
「おっけーナイスカット!」
体育館二階のギャラリーから見下ろすと、鋭い掛け声が聞こえてくる。それを見て、やっぱり無理だ、と思った。バスケ部より前にも色々見たけど、どれも合う気がしない。そんなことを考えていると、不意に隣で声がした。
「…バスケは無理そう?」
そう聞いてきたのは、夏海でも無く、先生でも無く哀翔くんだった。せっかくなら夏海に案内して欲しかったけど、夏海も部活だし、先生は外せない会議があるとかなんとかで……。
「あー、うん、文化部見に行きたい。」
「了解、何から見に行きたい?」
私の手元を覗き込まれる。正しくは私の手にある部活動一覧表だけど。それを一緒に見ながら行きたい部活を探す。
「んー、吹奏楽は嫌だし…文芸も……。」
楽しくて退屈しないけど、熱量差は生まれない部活がいいなぁ……。
「…声出てるよ?」
「え…?」
慌てて口を押さえたってもう遅い……遅、い?
「はぁ!?」
「あー面白い、飽きない。」
これまた大爆笑。この人、すごいよく笑うな。イケメンのくせに、クールな見た目してるくせに。
「じゃあさ、俺の部活見に来ない?」
「………何部?」
というか、この人部活入ってるのに私の案内してていいのか?幽霊部員とかそういう感じ?
「その一覧表には書いてないんだよね。」
「…どういう事?」
一覧表に書いてない部活、ちょっと気になるかもしれない。そんな部活絶対面白い!!
そんな風に乗せられてしまった私は今、朝この人と出会った場所の方まで来ていた。渡り廊下を曲がって奥に進むと途端に銀の扉が立ち並ぶ。まるで研究室みたいだ。
「さっき曲がる前のが理科室と科学準備室ね。」
「……うん。」
朝、ここまで迷い込んできたと思うと自分の方向音痴加減には驚く。というかもはや怖いくらいだ。
「あ、着いたよ。」
その声に足を止めると、目の前には他の教室と変わらないような引き戸の扉。
「…なに、ここ。」
「俺の部活。」
哀翔くんはそういいながら扉を開いた。
開け放たれたそこにあったのは人間の腕。そんなわけあるか!!と一度目を擦って見直しても大量の機械と人間の腕がそこにはあった。
「……人体実験!?」
「違うわ、それ人間の腕じゃないし。」
薄橙色で、五本指があって爪があって、手首と肘くらいまでの腕。これが人間の腕じゃなければなんだというのだろうか。
「まぁ、最初は戸惑うよな。」
「戸惑うもなにも、人間の腕じゃん!」
「これ、精密に作られたロボットの腕なんだ。」
ロボットの腕………?ロボットってもっと無機質で銀とか金具とかがいっぱいなんじゃないっけ?
「人間の構造を真似て作ったんだ。」
差し出された手、ロボットの手を握る。すると滑らかな動作で握り返されて驚いた。
「すごいだろ?俺が作ったんだ。」
多分、他の人が言ったらナルシストみたいで嫌われるだろうけど、哀翔くんが言っているのと、成し遂げたことのスケールがでかすぎて自慢に聞こえないという不思議なことが起こっていた。
「すごい………」
「うん、こういうの、好き?」
女の子だから、興味ない風に装ってるけど、実はこういうの……
「うん、すごい好き。」
「良かった。」
「ところで、ここは何部なの?」
私が聞けば、あ、確かに言ってなかったというように頭を掻いて、それから言った。
─────人工知能研究部へようこそ。
そうして、私は人工知能研究部に入部した。
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