第3話


 先生に導かれるようにして着いたのは三階の端にある教室。もうすぐチャイムが鳴る時間だというのに教室の中は騒がしい。

「北山は向かいの進路室で待っててくれ。」

「わかりました。」

ホームルームで紹介はされるけど、それまで少し時間があるからだろう。それに、廊下で待っていたらチャイムが鳴る頃に登校する生徒たちには転入してくることがわかってしまう。学校上それはあまりよくないのだろう。

 進路室で待っていると、程なくしてチャイムが鳴った。チャイムぎりぎりに登校して「ギリギリセーフ」なんて声と「アウトでしょー」なんて声。それを聞きながら、自分の出番をじっと待っていた。

「…じゃあ連れて来るから、歓迎しろよ。」

遠くでそんな声が聞こえた気がした。足音がどんどん近づいてくる。多分出番だろう。

「…歓迎してくれるから大丈夫。」

「ありがとうございます…。」

 先生の後に続いて教室に入ると、そこは拍手喝采の大盛り上がり。私が転入しただけでそんなにお祭り騒ぎするものなのか……?まぁ、私自身転入に慣れているわけでもないし、このときは確かに期待と不安が相交ぜになって不思議と高揚感がある。

「自己紹介、できるか?」

「…はい。」

笑顔と同じく一週間前から練習した自己紹介の成果をここで発揮できるといいけど…。

「はじめまして、都立西高校から来ました。北山みつきといいます。海に月と書いて海月です。これからよろしくお願いします!」

我ながら上手く行ったんじゃないだろうか。けど、周りがどう捉えるかは分からない。そっとあたりを見渡すと、また拍手。

「…盛り上がりすぎも考えものだな、」

ボソリと横で先生が言ったのが聞こえた。こんなに盛り上がるクラス、転入先大当たりかもしれない。

みんなからは、「好きなものはー?」「彼氏いますかー?」とか、いろんな質問が飛び交ってきている。

「質問は休み時間にしろー。」

先生のその声で、みんなは質問をやめた。……これは、うん。休み時間が休みじゃなくなるのは確定。

「…北山は、そうだな、来栖の横の空き机だな。」

窓際の一番うしろ…!めっちゃいい席じゃない?……って、来栖??

「あっ?!」

「どうした北山。」

「…いや、大丈夫です。」

来栖って、来栖哀翔か………!!同じクラスだったの!?衝撃……。

 先生に促されるまま、窓際の一番うしろ。…来栖哀翔の隣に座る。

「同じクラスだったな、よろしく。」

「…あー、よろしくお願いします。」

私の高校生活、恋愛イベント多すぎませんか?

 休み時間やお昼休みを使って行われた大質問会は放課後にまで続いた。もはや、聞くことないんじゃないかというくらいの質問。それでもどんどん溢れてくる質問。でも、友達もできたし、可愛くしてきた甲斐があった。

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