第九部
第120話 森人族の里
ジュードが居なくなってから10年後、ガイとフレミアはかつて
引き取った
ガイはフレミアに同行して北の大陸に来ただけで、
ガイは少年だった頃からフレミアを知っている。上級貴族の子女は幼少の頃から顔を合わせる機会が多く、ガイは初めてフレミアを見た時から彼女に憧れていた。それで王都騎士団へ入団した時に結婚を申し込もうとしたが、彼女は既に幼馴染と婚約済で、諦めるしかなかった。その後は辺境に左遷されて出会う事はなかったが、ジュードの従者となった際にフレミアの実家が没落していた事を知り、ガイは彼女を救えなかった事を深く悔やんだ。その後、ガイはフレミアと再会したが、その頃のフレミアの瞳にはジュードしか映っていなかった。フレミアが北へ行くと言い出した時に彼女に同行したのは、ガイが未だ彼女への気持ちを残している為だった。
北の大陸で生活を立ち上げる際に各種族と交流を持ち、その際に
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北へ移住して10年が経過したある日、ガイはフレミアの家を訪ねた。ガイはフレミアの前に出ると片膝をつく。その手には毎年恒例の花束があった。フレミアのいる部屋の隅ではマリリアから引き取った子供、マリエラが本を読んでいる。
「フレミア、私の妻となって下さい。必ずあなたとマリエラを守ります。」
「私は子持ちの年増女ですよ。揶揄わないで。」
「あら、私は賛成よ。ガイ叔父ちゃんならママを任せられるわ。」
「マリエラは黙ってなさい。」
「はーい。」
マリエラは本を置いて部屋を出て行った。外で近所の子供達と遊ぶのだろう。ガイは依然として膝をついたままフレミアの前にいて、ただ真っ直ぐに彼女を見ている。
「はぁ〜、困りました。あなたは一度決めたら考えを変えないのですね。」
「もう諦めないと自分自身に誓いました。」
「何を求めているか分かりませんけど、私よりもっと素敵な女性がいるでしょう。この里の女性の中にはあなたに憧れている人も大勢いるのよ。」
「私にとって女性はフレミアだけです。」
「本当に頑固者。もう何度も断っているでしょう? 以前の私をあなたも知っているでしょうに。」
「10年も前の事です。」
「そっ、そうね、もう10年...そんなに経つのね。そろそろ私も変わるべきなのかも知れません。それに、ここに来てからあなたにはお世話になりっぱなしで、もう、あなたの居ない生活は考えられない...」
フレミアは目を瞑ってゆっくりと深呼吸した。
「分かりました。こんな私で良ければ妻にでも何にでもなりましょう。その代わり、マリエラと私を幸せにすると約束して下さい。」
「私の一生をかけて必ず...」
ガイが言い掛けたところで、部屋の外で聞き耳を立てていた子供達が突然入って来た。
「やった〜。ママ、ガイ叔父ちゃん、おめでとう〜」
「すげ〜、とうとう里長がマリエラのママを口説き落としたぞ。」
「直ぐに皆んなに知らせようぜ。」
騒ぐだけ騒いで子供達は部屋を出て行った。ガイは立ち上がってフレミアをやや強引に引き寄せる。フレミアは戸惑いつつも抵抗しなかった。
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