第95話 異界の怪物
ジュード達の活躍もあり、各種族が居住する地域を管理下に置いていた闇森人は追い払われ、時折現れる獣人兵は討ち倒され、闇森人に使役されていた族人の多くが解放された。残るは闇森人が守る南の軍港周辺となっていた。今こそ闇森人を討伐すべし、そうした意見が出始めていた。だが、闇森人の数は多く、また支配する地域も広い。加えて闇森人の攻撃力も依然として脅威だった。小規模の戦闘であればジュードの参加によって被害を抑えられるが、大規模な戦闘となると、ジュード1人では守りきれず、大きな被害が出てしまう恐れがあった。
「これはワシらの戦いだぞ、多少の被害は覚悟の上よ。ワシら古の神々も参戦する。お前1人で全てを抱え込む必要はない。」
テラスゴの言葉に多くの種族が賛同し、闇森人が守る地域への侵攻が決まった。作戦はいたって単純、種族の神々が戦える者達を率いて闇森人の領域へ侵攻、それぞれが進めるだけ進む、削れるだけ削る、というものだった。ジュードにも各種族から選りすぐった先鋭部隊が任された。巨人族のゴルバ、龍人族のティーゼはジュードの部隊に配属された。
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闇森人の領域は厚く高い城壁に守られ、その城壁の上から弓による強力な攻撃が降り注ぐ。しかし神性を持つ各種族の神々には通じない。闇森人側で神々に攻撃できるのは精霊石を胸に埋め込まれた獣人兵だけだった。その為に戦闘開始の初期段階は城壁外での神々と獣人兵による戦闘だった。巨体同士の戦いは激しく、大きな音を立ててぶつかり合い、殴り合い、あるいは相手を投げ飛ばし、その影響で周囲の樹々が薙ぎ倒され、地面が割られていく。近くの城壁は投げ飛ばされた神々や獣人兵がぶつかって所々崩れ始めていた。
「次は俺たちの番だ。行くぞ。」
徐々に神々が優勢となって巨体同士の戦いが落ち着いてくると、各種族の兵士達が城壁の攻略に取り掛かった。既に城壁の幾つかの箇所は崩れ落ち、そこの瓦礫を通って城壁内へと入って行く。またある者は城壁に梯子で登って上にいる闇森人に襲い掛かる。城壁からの矢による攻撃は降り注いでいたが、兵士達は犠牲を厭わず進み続けた。
城壁の上の闇森人が一掃されると各種族の兵士達が次々と城壁内へと入っていった。その頃には神々と獣人兵の戦いも終わり、動ける神々も城壁内へと入って行く。この段階になってジュードの部隊も城壁内へと入って行った。目指すはかつて森人族の神が異界からアゼルヴェードを呼び出したと思われる神殿だった。
城壁内のあちらこちらで戦闘が続いている。まだ闇森人は根強く抵抗している様だった。だがジュードは脇目も振らず神殿へと向かった。進むにつれて抵抗する闇森人は少なくなっていった。おそらく闇森人の兵の多くは城壁付近に集中していたのだろう。大した抵抗を受けずに神殿へと到着した。気が付くと龍人族のテラスゴが追い付いて来ていた。間をおかずにジュード達は神殿内へと入って行った。
神殿の奥の広間には、黒い粘液状の物体が数多くいた。その物体の周囲には幾つもの触手があり、その触手がウネウネと動いているので生きていると分かる。殆どの物体は子供ほどの大きさだが、中には獣人兵並みの大きさの物体もいる。
「こいつらはアゼルヴェードの子供達だな。異界の怪物の本来の姿なのだろう。大きいのは獣人兵を取り込んで中途半端に神性を持った個体だろうか。」
「小さい奴はガイ達に任せる。大きい奴は俺とテラスゴが相手をする。」
ジュード達は一斉に異界の怪物達に斬り掛かった。小さな怪物は触手を振り回して抵抗するが、殆ど何もできずに討ち倒されて行く。攻撃が通ずるなら神性は持っていない。一方の大きな怪物は、触手1つ1つが鞭の様にジュード達を打ち据える。手数が多く、なかなか近寄れない。テラスゴは触手の攻撃を弾くので精一杯の様だったが、それでも何体かを引き受けてくれている。ジュードは触手を1本ずつ切り払いながら徐々に前へ前へと進み、1体を斬り倒した。1体が減って触手の連続攻撃が弱まると、ジュードは次々と残る怪物を斬り倒していった。
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