第93話 龍人族の里

龍人族が住むと言う北の山脈の中腹にジュード達は向かっていたが、その道中でガイが遠くの戦闘音を聞いた。近付いてみると龍人族と闇森人との戦闘が行われているのが見える。それぞれ30人程いた。龍人族は狭い隘路に闇森人を誘い込み、闇森人が得意とする弓矢の遠距離攻撃を封じている様だった。しかし闇森人の後方から虎の頭と四肢を持った異形の者が出て来ると状況は変わってきた。やはり異形の者には攻撃が通じていない。


「龍人族を助けるぞ。」


ジュードはガイやゴルバと共に闇森人が密集している所の側面へ回り込み、唐突に斬り込んだ。ジュード達に気が付いた闇森人の何人かは剣を構えたが間に合わない。ジュードとガイに次々に斬り倒されていった。ゴルバもその巨躯を活かして殴り倒している。そうして闇森人の半数ほどを片付けたところで、それまで龍人達を相手にしていた虎男がジュード達に向かってきた。


「ガイとゴルバは龍人達と協力して闇森人の掃討。誰も逃すな。こいつは俺がやる。」


そう言うとジュードは光の紋章を光らせて虎男に斬り掛かった。虎男の両腕は激しくジュードの光の盾を削るが、耐えられない程ではない。虎男は獅子頭と同じく力任せに攻めるタイプだった。ジュードは虎男の攻撃の合間を縫って傷を与えつつ、光の盾や鎧で相手の攻撃を弾き、徐々に体力を奪っていった。そうして虎男が疲弊して動きが鈍ったところで、胸の中心部を光の剣で貫いた。同じ頃にガイとゴルバは闇森人を片付け終わっていた。


「貴様は誰だ。どうやって獣人兵を殺した。」


龍人族の女戦士が前に出て剣をジュードに向けながら問いかけた。龍人族の特徴なのか額の上部から後方に伸びる2つの短めの角が見える。身につけている武装はジュードが住む大陸では見ない様式だった。それ以外は普通の人間の様だと思えた。


「獣人兵とはこの虎の頭を持った大男の事か? 剣で斬っただけだ。」


「だからどうやったら獣人兵を斬れるんだ。普通の剣なら斬れない筈だ。貴様を包んでいるその光に秘密があるんだろう。それを教えろ。」


「失礼な奴だ。先ずは礼を述べるべきじゃないか?」


「そっ、そうだな、確かにそうだ。助かった。感謝している。」


「俺達は龍人族と話をしたくて訪ねてきた。君達は龍人族だろう。棲家に案内してくれないか?」


「敵でないと証明しろ。それと獣人兵の殺し方も教えたら案内してやる。」


「証明はできないが、ここに巨人族の青年がいる。彼から事情を聞いてくれ。獣人兵との闘い方は、立ち話で話せるほど単純ではない。」


ゴルバは剣を向けている女戦士に近寄り、これまでの経緯を話し始めた。女戦士は剣を下ろしてゴルバの話を聞いていたが、時折ゴルバに質問し、また時に驚いた顔をしてジュード達を見ていた。その間にガイは虎男の胸を裂いて精霊石が砕けている事を確認した。その他の龍人族は闇森人の武装を剥ぎ、死体を穴に埋めていた。奥に隠れていたフレミアも出て来て、戦闘で塞がっていた傷が開いてしまったジュードを手当していた。


「分かった、案内する。ついて来てくれ。」


女戦士に案内されて山道を進む。かなり入り組んだ地形で、これだと案内なしでは辿り着けなかったかも知れない。所々道が悪く、フレミアはゴルバの背負子に座りっぱなしだった。2時間ほど歩いて漸く龍人族が住む里に着いた。

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