第77話 異形の者達との戦い

突然現れたジュードを見て牛頭の大男が後ずさったが、ジュードの光の剣は大男の腕を傷付けた。その様子を見ていた蛇女が尻尾でジュードを攻撃したが、ジュードの光の盾に防がれて彼を少し後退させただけだった。上空から羽持ちがジュードを襲おうとしたが、マリリアの矢による牽制に阻まれた。そうして双方は少し距離を取った。


次は異形の者達からの攻撃だった。牛頭の大男がジュードを両手に持った斧で襲うのと同時に蛇女が尻尾でジュードの足元を払おうとする。ジュードはそれを剣と盾とで受け流そうとしたが、次々と繰り出される敵の攻撃に光の鎧が破られて僅かながら傷を負い、堪らず後ろへと飛び退いた。そのジュードを牛頭と蛇女が追撃しようとしたのをイェリアナの大剣とシルリラの魔術が阻む。上空からジュードを狙う羽持ちはマリリアの矢が牽制していた。


マリリアに翻弄されて苛ついた羽持ちは今度はマリリアに向けて急降下したが、シルリラが放った炎の壁に行手を塞がれ、慌てて上昇に転じた。その羽持ちをマリリアの矢が追うが、羽持ちは楽々と躱した。この時点までマリリア達は神装具の力を使っていないので相手にダメージを与える事は出来ない。その事を異形の者達も何となく分かっていたが、ジュードが牛頭に傷を負わせたのを見て、念の為に用心している状況だった。


「このままじゃダメね。マリリア、シルリラ、やるわよ。シャム、お願い。」


「そうね。ミケもお願い。」


「分かりました。トラ、お願いします。」


3匹の精霊がそれぞれ神装具に吸収され、その力を発揮してマリリア達が光に包まれた。


マリリアは弓を引き絞るが、その弓には魔法で作った矢が番えられている。その魔法の矢が羽持ちに向かって放たれた。羽持ちはそれを避けようと旋回すると、矢はその羽持ちを追うように軌道を変えた。一部の民族のみが使う特殊な弓矢の技術だった。羽持ちは更に急旋回してどうにか矢を避けた。マリリアは第2第3の矢を羽持ちに向けて放った。


マリリアの攻撃と同時にシルリラは魔術を蛇女へ向けて放った。蛇女は硬い鱗に守られた尻尾で放たれた魔法を防いだが、魔法が当たった箇所は焼け焦げ、僅かながら鱗が剥がれ落ちていた。シルリラは更に魔法を放ち続け、鱗を削っていった。蛇女が怯む。その蛇女の側面からイェリアナが大剣で斬り掛かり、その大剣を受け止めようとした蛇女の左手から肘までを一気に切り裂いた。


ジュードは牛頭と斬り結んでいた。牛頭が両手に持つ斧の攻撃は変わらず激しかったが、蛇女や羽持ちからの横槍がないこの状況であれば、ジュードの方が有利だった。相手の斧は光の盾に弾かれ、光の剣で相手の傷を徐々に増やしていった。牛頭は目尻を釣り上げ、血管を浮き立たせ、必死に攻撃を加えたが、ジュードの守りを崩す事は出来なかった。そして動きが鈍くなった牛頭が斧を大きく振り上げようとしたその時、ジュードは相手の左手首から先を切り捨てた。


「ジュード!、いったん下がって。」


マリリアのその声に反応してジュードが後ろに飛び退くと、牛男の前の先程までジュードがいた所に羽持ちが飛び降りた。気がつくとイェリアナとシルリラが少し離れた所で座り込んでいる。神装具による光は消えていた。マリリアはその2人を守るように立っていたが、暫くすると光は消え、地面に膝をついた。3人共もう戦える状態ではなかった。


牛頭と蛇女は徐々に後退していった。羽持ちが再び上空に上がって隙を窺っていたため、ジュードはマリリア達3人から離れて異形の者達を追撃する事が出来なかった。離れていった異形の者達は、そのうち見えなくなった。


ガイとクリスが率いていた先鋭は周囲の敵を完全に排除していた。その他の救援部隊も城壁内の国軍と連携して敵軍を敗退させていた。城壁の外の砂漠には多くの死者が横たわり、突風が巻き上げた砂がその上に降り注いだ。

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