第76話 ハルザンド国軍への救援

港町から偵察隊が戻る頃にはハルザンド国軍の体制もある程度は整っていた。国軍は港町に向けて進軍し、あと1日で港町という場所で敵軍と遭遇した。戦闘が開始されると、国軍の敵軍に向けて前進、同時に左右からも兵を出して包囲を試みた。敵軍には様々な人種族が混在し、中には頑強な者もいるが、全体としては然程の強さはなかった。兵数も多くはない。しかし後方にいた異形の者達が前に出てくると状況は大きく変わった。


ハルザンド国軍の攻撃が異形の者達に全く通じなかった。矢でも、槍でも、剣でも、魔術でも、異形の者達は傷ひとつ負わない。しかも異形の者達の攻撃は激しく、牛頭が振るう斧や蛇の尻尾の一撃は数名の兵に致命傷を与える。鳥の羽を持つ者は鋭い爪で兵を切り裂くか、上空に持ち上げてから落とす。ハルザンド国軍は次第に数を減らし、その数が半数に近づいた時に撤退した。そして港町から5日ほどの距離にある城塞都市に立て籠った。


「今も国軍はその城塞都市で籠城していますが、状況は厳しいそうです。」


「俺達は城塞都市の救援に向かえば良いのか?」


ジュードの問いにイェガス王とその側近は頷いた。


ーーーーーーーーーー


それから2日後にマリリア達がハルザンド王都に到着した。それまでの間にジュードは救援部隊の編成を進め、マリリア達の到着の翌々日に城塞都市へと向かった。それに先行する偵察部隊は2つ、1つは城塞都市を囲む敵軍の偵察、もう1つは敵軍の増援や補給部隊の偵察を目的とした。


更に5日後、城塞都市に近づいた救援部隊は、間を置かず、都市を囲む敵軍の後方から攻めかかった。異形の者達がいない箇所を攻めたので敵軍は簡単に崩れた。そこで救援部隊の数名が城壁に近づき都市内に向けて矢を放つ。矢には救援作戦を書いた紙が結われていた。都市内の国軍がタイミングを合わせて城壁内から呼応してくれれば、敵軍への圧力が強まる筈だった。


「そろそろ俺達の出番だ。」


ジュードはそう言うとマリリア達や少数の先鋭を率いて異形の者達がいると報告された場所へ向かった。一際大きな体躯を持つ異形の者達を見つけるのは容易だった。相手もこちらに気が付いたらしく、ゆっくりと前に出てきた。


「前面は俺が出る。イェリアナは側面からの攻撃を徹底、近付き過ぎるな。マリリアとシルリラは後方からの支援、出来れば飛んでる奴を頼む。その他は周囲の一般兵を近付けさせるな。」


矢継ぎ早に指示を出すとジュードは駆け出した。イェリアナがその後を追う。その後ろからシルリラの炎の魔術が異形の者達へと飛んでいったが、まだ神装具の力を使っておらず、相手に傷を負わせる事はなかった。それでも異形の者達を炎が包み、煙が視界を遮った。その煙を相手が振り払ったところで次はイェリアナが大剣の衝撃波で砂を巻き上げ、それによって出来た砂の壁で再び相手の視界を遮った。次の瞬間、ジュードは砂の壁を突き抜けて牛頭の大男に斬り掛かった。

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